2024年度第5回アカデミック・リンク/ALPSセミナーは、「教育・学修の観点から新たな時代の質保証システムを考える」という題目で、千葉大学名誉教授の前田早苗氏を講師とし、開催されました。
冒頭に、認証評価に関する経緯の振り返りとして、大学の自主性・自律性を踏まえつつ、大学の教育研究の質の維持向上を図り、その一層の活性化が可能となるような新たなシステムとして認証評価が開始されたことや、第1期~第3期の認証評価の特徴が解説されました。
そして、内部質保証に関する問題として、内部質保証システムの構築・3つの方針(AP、CP、DP)の設定、DPへの「身に付けるべき能力」の記載などが段階的に進められるにつれ、大学の自主性・自律性の重視という当初の理念に反する状況になりつつあると指摘されました。加えて、内部質保証に関する理解が進まないまま、他大学のシステムを模倣したり、認証評価機関の示す例をそのまま取り入れたりした結果、意思決定プロセスの複線化、会議体の増殖や新しい会議体の機能不全といった問題が生じていることも指摘されました。また、現状の質保証システムでは、DPに明示した学修成果の把握・評価が不十分であることも説明されました。
更に、2025~31年度の第4期認証評価では、学修成果の評価がさらに重視されると予想されると述べられました。そのため、正しい情報収集、先進事例の調査、学内での意見交換といった対応が重要になる一方、認証評価を目的とした学修成果評価を行うのではなく、自大学・プログラムに適した方法の選択・開発が重要であると解説されました。また、日本とEUのディプロマ・サプリメントの位置付けの差に触れつつ、「可視化」を過度に意識することには危うさも伴うことが指摘されました。
最後に、学修支援体制の整備は認証評価における評価対象となること、少子化・学力格差の広がりなどを受けて学修支援の重要性は今後も高まっていくことや、質保証システムの今後の展望について説明されました。そして、対外的な質保証ではなく、学生が満足して卒業していける環境の整備が重要であると述べられ、セミナーは締めくくられました。
教育プログラムの設計と評価 (参照:ALPS履修証明プログラム)
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