大学図書館機能の変化は近年の大学図書館を巡る中核的な検討課題であるといえます。最新の政策的文書の一つである『オープンサイエンスの時代にふさわしい「デジタル・ライブラリー」の実現に向けて~2030年に向けた大学図書館のロードマップ~』(2024年7月公開)においても、今後の大学図書館は、「大学が新たな知の生産という使命を果たしていくため、オープンサイエンスとデータ駆動型研究の推進とともに、学修者本位の教育の実現に即した機能的変化」を求められると指摘されています。
このような機能的変化を生じさせ、しかも適切に変化し続けるための重要な要素のひとつが、組織ごとに異なる、背景・使命・目標等をふまえてベースとなる考え方(コンセプト)を組み立てることにあると考えられます。しかしながら、①コンセプトの提示、②設計と具現化、③変容しつづけるための実践や改善、については、実際にどう行っていけばよいのかという点で、多くの大学図書館が試行錯誤を続けているというのが現状ではないでしょうか。
そこで、今回のセミナーでは、大学における新たな知の生産と大学生のまなびを支えるためにコンセプトを明確にした上で、それに即してサービスを展開している三つの大学図書館の事例を共有することで、コンセプトの組み立てから実装に至るまでに何をどのように考える必要があるのかを理解する契機としたいと思います。
今回取り上げるのは、1)2025年春に、教室・ラーニングコモンズ・図書館の複合棟である「センターフォレスト」の竣工を予定している明治大学における図書館と大学キャンパスのラーニングコモンズ機能連携に係る新しいコンセプトとはどのようなものか、2)2017年、文理の垣根を超えて社会課題を解決するための学術拠点として、東大阪キャンパスに設置された近畿大学図書館「アカデミックシアター」(コンセプト設計からその実装に至るまで、地域・企業・学生・教職員といった多くの人々が、共に創りあげる過程はどのようなものであるのか)、3)2011年に「アカデミック・リンク」のコンセプトを掲げた千葉大学附属図書館における、「新しい図書館員」育成のための「プロジェクト型」業務や、リーダシップ育成を目的に新たに導入した「チームリーダー制」など、特徴的な人材・能力育成の仕組みの下で行なっている学生本位のハイブリッド型・学習支援とその実践・改善、の3つの事例です。
特色ある「コンセプト」を掲げる3つの事例から、コンセプト設計の過程、具現化の方法、変容を続けるための改善や工夫について学び、各大学図書館が、自らの置かれた環境の中で、より良いまなびを支えるための機能的変化を続ける手がかりとできればと考えます。
教育・学修の方法と学修支援サービス (参照:ALPS履修証明プログラム)
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