2020年度第4回アカデミック・リンク/ALPSセミナーは、「著作権法改正は大学教育に何をもたらすか-授業目的公衆送信補償金制度の本格実施に向けて-」という題目で、アカデミック・リンク・センターのセンター長である竹内比呂也を講師として開催いたしました。
冒頭において、授業のオンライン化が社会的に必要であるという議論を発端として、授業目的公衆送信補償金制度が考えられてきたことが述べられ、オンライン授業を、コロナ禍における緊急対応としてではなく、学修者本位の質の高い学びの実現に寄与する手段として考えるべきであり、またそれを支える基盤としてこの制度が必要であると説明されました。
次に、制度の概要が説明されました。この制度の大きな意義は、補償金を一括で支払うことにより、著作物利用のための許諾が不要になる点であると述べられました。とはいえ、どのような著作物でも自由に使えるというわけではなく、改正著作権法第35条運用指針(令和3年度版)における「必要と認められる限度」に含まれる利用であるとしても「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当すれば、権利は制限されず許諾を得ることが必要となる旨が説明され、公正な利用と権利の保護の両者のバランスが重要であることが強調されました。あわせて、補償金額の認可の概要や、その分配スキームについても説明され、定期的な見直しが予定されていることが補足されました。その他、著作物の教育利用に関する関係者フォーラムにおける議論なども紹介されました。
おわりに、学修者本位の学修を実現するという観点からは、学修のためのリソースへのアクセスが、地理的、時間的制約なく実現することが理想であるため、この制度はその助けになるべきであること、著作物の取り扱いについての基本は、細かなルールではなく、著作物やクリエイターに対する敬意とそれに基づく「良識ある判断」であると考えるべきこと、また、授業目的公衆送信補償金制度の有無に関わらず、学生の自律的学習のためのリソースの入手環境を改善するという観点から、多様なリソースのデジタル化とオープン化を進める必要があると述べられ、セミナーは締めくくられました。
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