2019年度第4回アカデミック・リンク/ALPSセミナーは、「「国際共修」によるグローバル人材育成―国内学生と留学生を分断しない意味ある実践の構築―」という題目にて、東北大学高度教養教育・学生支援機構教授、同グローバルラーニングセンター副センター長、総長特別補佐(国際交流)の末松和子氏をお招きし開催致しました。
今回のセミナーでは、はじめに、国際共修を「言語や文化の異なる学習者同士が、意味ある交流 (Meaningful Interaction)を通して、他者への理解を深めながら、己を見つめなおすメタ認知活動を経て、新しい価値観を創造する学習体験」と定義し、国際共修は、海外留学だけではなく、国内にとどまっていかに国際的な経験をしていくか、という「内なる国際化」といえると説明されました。
続いて、日本の国際共修科目について説明がなされました。日本では、国際共修科目は、対象が限定されている科目(例:留学生を対象とした日本語・日本語事情の授業)に他の学生を追加(例:国内学生)して科目として提供するといった経緯で発展してきたが、これは「すべての学生を対象にする」というカリキュラム国際化の基本的な考え方には反していること、日本の国際共修科目の課題として、構造上の問題や、正しい教授法の確立、効果検証の方法などが指摘されました。また、国際共修のペタゴジーの基本は、学習到達目標・学習成果・評価がつながっていること、更に、学生にとって何が重要かという目線が必要であると説明されました。具体的な授業設計として、学生に授業の目標を示すだけでなく、自分の目標を立ててもらい、学習に対するオーナーシップを持たせることや、受動的ディスカッションから能動的ディスカッションに発展させていくといった例が挙げられました。こうした授業の結果、学生が異なる価値観を理解したり、自分の価値観を批判的に見ることができるようになったこと、異なる行動様式に気づくことで、更なる異文化理解につながったことが説明されました。
授業において教育実践者は、ファシリテーターとして、国内学生、国外学生にかかわらず全ての学習者に意味ある交流が学びをもたらすよう、授業や活動をデザインすること、授業内でフィードバックのチャンスをとらえ、学生の更なる行動を促すことが必要であると強調されました。こうした国際共修の学習効果としては、異なる観点への気づき、多文化環境でのエンプロイヤビリティ、語学能力、学習コミュニティへの帰属意識の向上などが挙げられるとまとめられ、最後に、参加者同士で国際共修授業・活動を設計する活動をおこない、セミナーは締めくくられました。
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