このページでわかること
- 論文を投稿しようと思ったときにジャーナルについて確認すべきこと
- 論文の投稿先を選ぶのに役立つツールとその特徴など
目次
論文を投稿するとき、どのジャーナルを選べばよいか困ったことはありませんか?
みなさんが研究室やゼミナールに所属している場合、論文の投稿先については、その都度、指導教員の先生方が指導してくださる(相談にのってもらえる)ことが多いはずです。
しかし、学問分野の細分化等によって、ジャーナルのタイトル数(学術誌の種類)は急増しており、研究分野によっては、論文の投稿先について迷うケースも増えてきました。
ここでは、研究をはじめたばかりの大学院生(修士1年生)を主な対象として、論文を投稿しようと思ったときにあらかじめ知っておくべきことや指導教員の先生に相談する際のポイント、さらに、論文の投稿先を「自分で選ぶ」必要がある場合やその選び方に迷ったとき、投稿先を探すのに役立つツールやその特徴などについて紹介します。
論文を投稿しようと思ったときに
研究がある程度進んでくると、成果をどこで発表するかを選択する段階がやってきます。あるいは、研究分野によっては、事前に発表先を想定してから、研究成果をまとめることもあるでしょう。
指導教員に相談する
みなさんが取り組んでいる研究の分野や性質、研究の進捗状況、分析結果によって、研究成果の発表先と選択肢は変わるかもしれません。
学術雑誌(Journal)のほか、技術報告書(technical report)、紀要(bulletin, memoirs)など、研究分野によってはジャーナル以外の発表先も存在します。
研究分野やみなさんが報告したいテーマに応じて、論文の投稿先を決める必要があります。より適した発表先がどこなのかは、研究を始めたばかりでは判断できないことも多いと思います。
そこでまずは、指導教員(所属研究室やゼミナールの先生)の先生に相談してみましょう。
続いて、その分野で特に重要な、主要学術誌(コア・ジャーナル)にどのようなものがあるかも、尋ねてみましょう。
ジャーナルの評価指標としてJIF(Journal Impact Factor, ジャーナルの影響度を論文の引用から算出している指標)などがよく用いられます。しかしこのような評価指標だけでは計れない、研究者間で「特に重要な雑誌である」とみなされているジャーナルもあります。
指導教員や同じ研究室の人たちがよく投稿しているジャーナルを確認する
指導教員の先生に相談するときは、事前に、所属研究室の先生方や先輩の論文がどのようなジャーナルに掲載されているかを確認しておくとよいでしょう。
特に、似た研究に取り組んでいる先輩が、①研究のどの段階で、②どのような投稿先(成果の発表先)を選択していたか、という点が参考になります。
これを見ておくことで、たとえば、そのジャーナルには研究分野の最先端・重要な成果が掲載されるのか、あるいは速報性を重視した内容が掲載されるのか、といった研究分野におけるジャーナルの位置付けが把握できます。
ジャーナルの目的、ポリシー、投稿規定等を確認する
よく投稿しているジャーナルを見つけたら、次に目的、ポリシーや投稿規定を確認しましょう。
ジャーナルにはそれぞれ特徴(目的、ポリシー)があり、各ジャーナルはその特徴を明文化してジャーナルの紹介ページに投稿規定とともに掲載しています。
研究内容がよいものであっても、そのジャーナルの目的やポリシーと合致していなければ、投稿したい成果がジャーナルの目的やポリシーに合致していないと、受理されにくくなります。
たとえば、「本誌がカバーする領域から外れている」と判断されることもあるかもしれません。
そこで、このような観点を中心に特徴を把握しましょう。
- 取り扱う研究分野やテーマは何か
- 基礎研究が中心なのか、応用・実践的な内容か、両方を含むのか
- 広範な内容を取り上げているのか、専門に特化しているのか
さらに、投稿規定では論文を投稿するのに重要な、より詳しい決まりごとが書かれています。
- どのような論文の形式を取り扱うのか(原著論文、技術/事例報告、速報など)
- どんな形式・スタイルなのか(ページ数・語数、図表数、引用スタイル、ファイル形式など)
- 倫理・法的な規定はあるか(利益相反、著作権など)
- 投稿料は必要か、いくらか
- 査読のプロセスやスケジュールについて
目的やポリシーはジャーナルのウェブページの「About the Journal」や「Aims and Scope」、投稿規定は「For Authors」などの項目に掲載されていることが多いです。
最初は分かりにくいと思いますが、例を挙げますのでいくつか読み比べてみてください。
- 物理学分野の国際誌:Physical Review Letters - About、Publishing Guidelines
- 医学分野の国際誌:Journal of the American Medical Association - About(Information for authorsを含む)
- 認知科学分野の国内誌:認知科学 - 学会誌『認知科学』、『認知科学』投稿規程
- 日本近代文学分野の国内誌:日本近代文学 - 機関誌『日本近代文学』(投稿規程を含む)
ジャーナルの投稿プロセス(特に、査読の有無と期間)を確認する
各ジャーナルの「投稿プロセス」についても確認しましょう。たとえば以下の点です。
- 査読(peer review)の有無(専門家集団が論文掲載の可否を判断するか)
- 投稿してから、査読が何回あるか
- 投稿~査読~雑誌掲載までに、どれくらいの期間がかかるか
- 査読には、どのような専門家集団が関わるか(査読体制)
これらの情報も、さきほど紹介した投稿規定などに掲載されています。ジャーナルによっては、情報が非開示の場合もあります。
例を挙げますので、上記の投稿規定とあわせて見てみましょう。
- 総合学術誌:Nature - Editorial criteria and processes
大学院生のみなさんにとって「論文の投稿」は、学位の取得と強く関連しているケースもあるでしょう。
特定雑誌への論文掲載が学位論文執筆の前提条件になっているケースや、査読付論文(フルペーパー)の掲載本数が何本あるか、掲載先が国際的な学術雑誌か、投稿言語が何か(日本語・英語・そのほか言語)などが前提条件になるケースもあります。
投稿先を選ぶとき、査読の有無や期間等の情報とあわせてこれらもよく確認し、研究計画の一助としましょう。
粗悪学術誌(ハゲタカジャーナル)ではないか確認する
さらに、投稿先として考えたジャーナルが、掲載料を目的とする粗悪なもの(粗悪学術誌)でないか、念のために調べておきましょう。
粗悪学術誌とは何か、なぜ近年問題となっているのか、粗悪学術誌かどうかをどのように調べたらよいか等については、詳しくは「粗悪学術誌(ハゲタカジャーナル)について知る」をご覧ください。
オープンアクセスにできるかを確認する
政策によって、公的な競争的研究費(例:JSPSによる科研費や特別研究員制度のPD・DC1・DC2、JSTによるさきがけ・CREST・ACT-Xなど)を用いた一部の研究成果については、その研究成果をオープンアクセスにすることが求められています。これは、該当する競争的研究費のうち、2025年度新規公募分の受給者から適用されます。
この政策について、詳しくは「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」をご覧ください。
みなさんがこれらの競争的研究費を用いた研究をしている場合、実施状況報告書や実績報告書を提出する段階で、研究成果、特に電子ジャーナルに掲載された査読付きの論文をオープンアクセスとしているかどうかを報告する必要があります。
投稿したいジャーナルで自分の論文をオープンアクセスにできるかどうかを確認しておきましょう。
ジャーナルでオープンアクセスにできなくても、所属機関のリポジトリからオープンアクセスにする方法もあります(グリーンOAといいます)。「研究成果をオープンアクセスにする」をご覧ください。
千葉大学でのオープンアクセスに関連する情報提供
学術論文等の即時オープンアクセスに関して、「学術論文等の即時OA義務化」で具体的に研究者に求められていることは何か、千葉大学ではどういった対応ができるのか、などの情報を紹介しています。
また、ジャーナルでオープンアクセスにするときは「論文掲載料(APC)に関する案内」が参考になります。ここでは、提供している支援やAPCに関する情報をまとめています。
ツールなどを使ってジャーナルを探す
冒頭でも触れたように、近年、学問分野の細分化等によって、ジャーナルのタイトル数(学術誌の種類)が増加しています。つまり、投稿先を選ぶ際の選択肢が増加しているということです。
また、今後学際研究や国際共同研究が進むにつれ、専門以外の研究分野において、研究論文を投稿する機会が増す可能性があります。
論文の投稿先に迷う場合には、以下のツールがその選択の一助になる可能性があります。
研究分野から投稿先のジャーナルやその評価などを調べる
引用データ等に基づいてジャーナルの影響や評価を示すデータベースです。
- 特徴:
- ジャーナルの目的、出版元、論文数や引用数の推移などを把握しやすい。
- ジャーナルの採録基準を設けているため、一定の信頼性が担保されている。
- 注意:
- 研究分野や収録されているジャーナルの言語に偏りがある。
Journal Citation Reports (Clarivate)
Clarivateが提供するジャーナル評価指標の「Journal Impact Factor」等を無料で調べることができるツールです(英語)。千葉大学の学内LANから、学外ではログインすることで利用できます。
Scopus (Elsevier)
Elsevierが提供するジャーナル評価指標の「CiteScore」等を無料で調べることができます(英語)。千葉大学では契約していないため、Scopus Previewという無料機能の範囲のみ利用できます。
論文のタイトルなどに含まれる単語からジャーナルを検索する
投稿予定の論文のタイトルや抄録に含まれる単語の類似性からジャーナルを推薦する、論文の投稿先推薦ツールです。
- 特徴:
- 投稿先の候補を複数見つけるのに便利である。
- 注意:
- 似ている論文がそのジャーナルに掲載されているかを判断するため、テーマは近いけれどジャーナルのスコープ外ということも起こり得る。
- 未発表の成果情報を用いるため、サービスの利用条件等をよく確認し、不安があれば抄録そのままではなくキーワードだけを入力するなど考慮するのがよい。
Web of Science Manuscript Matcher (Clarivate)
Web of Scienceの採録ジャーナルが無料で検索できます(英語)。アカウント登録が必要です。
Journal Finder (Elsevier)
Elsevierが発行しているジャーナルが無料で検索できます(英語)。
Journal and funding finder (SpringerNature)
SpringerNatureが発行しているジャーナルが無料で検索できます(英語)。
Journal Finder (Wiley)
Wileyが発行しているジャーナルが無料で検索できます。(英語)。
国内誌等のタイトルリストから選ぶ
上記の検索ツールとは異なりますが、国内で刊行されている学術誌を探すのに参考になるリストです。
雑誌記事索引採録誌一覧(国立国会図書館)
国立国会図書館は国内の出版物を広く収集し、雑誌記事索引を提供しています。その採録誌一覧です。
J-Stage資料一覧(科学技術振興機構)
J-Stageに電子ジャーナルとして刊行されているジャーナルを分野等で調べられます。
投稿先が決まったら
ツールなどを使って投稿先の候補を決めたときも、必ずそのジャーナルの目的、ポリシーや投稿規定をよく確認しましょう。冒頭で触れたように、ジャーナルの目的やポリシー、規定は自分の成果を投稿するのに適切か判断する基本的な情報です。
たとえば、論文に付随して研究データの公開を必須/推奨しているのであれば、原稿を提出するだけでなく、併せてデータを公開できるように整理することも必要になるかもしれません。ジャーナルが何を求めているのかを把握するのは重要です。
また、投稿先を決めるのに迷ったときは、冒頭に示したように、自分だけで決めるのではなく指導教員等の周囲の方々にも相談し、ご自身の成果がより評価される投稿先を選びましょう。
この記事は千葉大学附属図書館職員が原稿を執筆し、アカデミック・リンク・センターの教職員の監修を受けて作成しました。

