文章に数式をいれる(TeX, LaTeX)


電球アイコンこのページでわかること

  1. TeX/LaTeXを使うメリット、デメリット
  2. TeX/LaTeXの使い方やツール例
  3. TeX/LaTeXの簡単なコード

はじめに

レポート執筆やプリント作成で数式を用いるとき、どのようなツールを使っていますか?

WordやGoogleドキュメントでも数式の入力は可能ですが、TeX/LaTeX(テフ/ラテフ)を使うことで、よりきれいに数式を表すことができるようになります。

学生のみなさんがTeX/LaTeXを使う主な場面としては、

  1. 数式をきれいに出力したいとき
  2. 卒業論文や修士論文、博士論文を執筆するとき
  3. 投稿先の雑誌の執筆要領で求められているとき

が考えられると思います。

このページでは、「1. 数式をきれいに出力したいとき」に焦点を当てて、自分のパソコンでTeX/LaTeXを使い始めるときに必要な準備や、TeX/LaTeXの基本的な使い方について紹介します。

目次

TeX/LaTeXとは

TeXはスタンフォード大学名誉教授のDonald E. Knuthによって作成された組版ソフトのことです(奥村・黒木(2020))。コンピューター上でテキストと図版をうまく配置して、出力するためのソフトウェアとして開発されました。

一方、このTeXをコンピューター科学者のLeslie Lamportが機能的に強化したものをLaTeXといいます(奥村・黒木(2020))。具体的に、強化された機能としては、文書全体の様式を決定するスタイルファイルが導入されたことや図表や数式への番号付けの自動化といったものが挙げられます。

TeX/LaTeXのメリットとデメリット

下の画像は、それぞれGoogleドキュメント(左)とTeX/LaTeX(右)で作成した文書です(フォントは各ソフトでのデフォルトのものを採用していますので差があります)。

2_tex.PNG

左側の例を見たときに、数式の部分、特に積分記号(インテグラル)に違和感をもつ方が多いのではないでしょうか。それに対して、右側の例は教科書に掲載されているようななじみのある式になっていることでしょう。

TeX/LaTeXのメリット

TeX/LaTeXの一番のメリットは数式がきれいに出力できる点にあります。
上で確認したように、文書作成ソフトによっては、分数や指数、数学の記号等がきれいに出力できないケースが多々あります。それを解消してくれるのがTeX/LaTeXです。

TeX/LaTeXのデメリット

TeX/LaTeXがあまり普及していない理由には、次の2点が考えられます。

  • パソコンに実装する必要があること
  • TeX/LaTeXはプログラミング言語であること

パソコンへのTeX/LaTeXの実装についてはTeX/LaTeXを使うためにで説明します。

プログラミング言語であるTeX/ LaTeXで先ほどの簡単な文書を出力する場合は、次のようなコードを打つ必要があります。


\documentclass[10.5pt]{jsarticle}
\usepackage{amsmath,amssymb}
\begin{document}
\noindent{\LARGE 今日の1問}\\
次の積分を計算しなさい。\\
\begin{align*}
\hspace{-5cm}\int_a^b(x^2+3)dx  
\end{align*}
\end{document}

プログラミング言語である以上、文書の構造を指定したり、記号を出力するための固有の命令文が存在したりするため、コードは大変複雑に見える場合があります。

TeX/LaTeXを使うために

どうすればTeX/LaTeXを使えるのか

ほとんどの場合、新しく購入したパソコンにTeX/ LaTeXはインストールされていません。

そのため、TeX/LaTeXを使うためには

  1. パソコンにTeX本体のデータとエディター(編集ソフト)のインストールをする
  2. オンライン上でTeXを扱うことのできるサイトに登録する

の大きく2つの方法をとる必要があります。
それぞれの特徴をふまえて、自分に合った方法を選びましょう。

1.のメリット

  • インストール後、パソコンがあればネットの状況にかかわらず編集可能
  • ファイルは保存場所が選択可能
  • エディターは自分に合ったものを選択可能

1.のデメリット

  • インストール方法が多数
    ネット上のインストーラー、TeX関連の書籍の付属CD等があり、パソコンとの相性によってインストールに時間がかかったり、エラーが起きたりする。
  • 自分でデータの更新が必要

2.のメリット

  • インストール不要
  • 登録するだけで編集可能
  • ファイルはオンライン上で管理(ダウンロード可能)
  • データの更新不要

2.デメリット

  • 登録したサイトの消失
  • ファイルの消失(ダウンロード忘れ)

具体的なソフトやサイトの紹介

インストールして使うエディターとオンライン上で使うエディターをいくつか紹介します。

インストールして使うエディター

  • TeX maker
  • TeX works
  • TeX studio
  • Visual Studio Code(TeXのみではなくその他のプログラミング言語にも活用可能)

オンライン上で使うエディター

  • Cloud LaTeX

ソフトの選び方

上述したエディターの選び方は人それぞれです。
どのエディターにも、基本的な機能は共通して備わっています。

研究室の先生や先輩といった周囲の人が使っているものや購入した解説本に合わせて選択するとよいでしょう。

TeX/LaTeXの簡易実践

LaTeXの基本情報

実際にTeXコードを用いて文書ファイルを作成するときには、クラスファイルの指定など、さまざま理解しなければならないことや、覚えておく必要のある用語などがあります。

ここでは、初めて文書を作成する際に多くの人がつまずく用語を中心に、確認しておきましょう。
説明にはCloud LaTeXを用います。

3_tex.png

まず、\documentclass[]{}(①)で文書ファイルの形式を決定します。
上の画像ではA4サイズでフォントサイズを10ptとしています。
\documentclass[]{}~~\begin{document} の間(②)をプリアンブルと呼びます。
この部分では、文書作成する際に必要な記号等の細かい設定を行うことができます。
例えば、基本的な数学の記号が定義されているパッケージ「amsmath」「mathtools」などを用いる際には、プリアンブルに
\usepackage{amsmath}
\usepackage{mathtools}

と記述します。これを記述することで\begin{document} ~ \end{document}(③)に本文(数学の記号を含む)を書き進められます。

コンパイル(④)とは入力したコードの内容を、PDFファイルで出力するためのボタンです。具体的なコードとコンパイルの流れはTeX/LaTeXの練習法で扱います。

文書の作成

4_tex
上のような文章をつくるために記述するコードは次の通りです。

5_tex.PNG

【コピー用】

\documentclass[10.5pt]{jsarticle}
\usepackage{amsmath,amssymb}
\begin{document}
\noindent{\LARGE 今日の1問}\\
次の積分を計算しなさい。\\
\begin{align*}
\hspace{-5cm}\int_a^b(x^2+3)dx  
\end{align*}
\end{document}

こちらを入力し、右上のコンパイルをクリックするとPDFファイルとして出力されます。
また、生成されたPDFファイルは保存し、印刷等の形で活用することができます。

TeX/LaTeXの練習法

コードの入力に慣れるために(実体験を通して)

TeX/ LaTeXは数式を出力するためのプログラミング言語であるため、プログラミング言語としての特徴を理解している必要があります。
TeX/ LaTeXを用いた文書の作成を上達させるためには実践あるのみです。

実践方法には以下のような例が挙げられます。

  • 教科書(中高大)の1ページを再現する
  • 数式を多用するレポートを作成する
  • インターネット上のTeXコードを動かして出力文書との対応関係を確認する

とにかく、何か文書を作ってみてできることを増やしていくとよいでしょう。

少しの時短方法

TeX/LaTeXのコード作成を2,3日でスムーズにできるようになる方法はありません。
はじめは調べたとおりにコードを打ったとしても、パッケージが足りずエラーが出てしまうなんてことはよくあります(実体験)。しかし、人にやってもらうわけにはいけないでしょう。TeX/LaTeXを使って書きたいのはレポートや卒業論文でしょうから。。。

そのような中で、少しでも早く習得するには「頼れるものは頼れ」です。
例えば、締め切りに追われている場合には、経験者である先輩や指導教員からテンプレートをもらいましょう。出力したい文書のコードについて質問しやすい(回答しやすい)という側面を含めて、かなりの時短になります。研究集会等で文書の形式制限がある場合には、学会などから事前にテンプレートが配布されますので、そちらを利用しましょう。

度々エラーが出て悩むようなことでも、経験者を頼ると、すぐに解決できるかもしれません。
いたずらに時間を費やさないよう、頼れるものは積極的に頼りながら、TeX/LaTeXを使った文書作成を行ってみてください。

参考資料

この記事は千葉大学の大学院生(分野別学習相談担当:ALSA-LS)が執筆し、アカデミック・リンク・センター等千葉大学の教職員が監修しました。

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