研究や進路について相談する・アドバイスを得る
このページでわかること
- (研究や進路について)相談するとどのような良いことがあるのか
- どんな相談先があるのか
- 相談内容や相談のタイミング、相談前の準備等について
はじめに
大学院生には、今後の研究の方向性や、自分のキャリアパスについて、一人で悩んだり、自己完結したりするのではなく、他者からアドバイスを得たいと思う場面や、アドバイスを求めた方が良い場面が多くあります。
そうした場合に相談先としてまず思い浮かぶのが指導教員であると言えます。
また、指導教員以外の研究者や先輩などと関わることで、自分の研究やキャリアについて考えるための多様な視点を得ることもできます。しかし、もしかすると、こんなことで相談していいのだろうか、どのように相談したらいいのだろうかと、相談をためらってしまうこともあるかもしれません。
本項目では、研究や進路に関して大学院生が悩みやすい事柄をあげ、相談するとどのような良いことがあるのか、誰に相談できるのか、実際に相談をするときに何に気をつけるとよいのか等を説明していきます。
目次
- (研究や進路について)相談するとどのような良いことがあるのか
- どんな相談先があるのか(さまざまな立場の人からアドバイスを得る)
- 何を相談するか
- 相談のタイミング、相談前の準備、相談後に行うこと
- 指導教員との関係がうまくいかなくなったときには
1. (研究や進路について)相談するとどのような良いことがあるのか
研究について
多くの場合、指導教員や他の研究者、先輩は研究に関する知識も経験も豊富であり、研究の段階に応じて必要なアドバイスをすることができます。また指導教員へ相談の約束をすることで、研究のペースメーカーとしての役割も果たすので、研究を進めていくきっかけにもなります。また、相談することで専攻分野のキャリアパスについて、より多くを知ることもできます。
キャリアについて
修了後のキャリアをどのように考えているかによって、どのような指導が適切であるかが異なる可能性があります。他者の意見を広く参考にすることで、自分では知らなかった選択肢を知れたり、より自分らしい選択ができたりする可能性が高まります。
2. どんな相談先があるのか(さまざまな立場の人からアドバイスを得る)
相談先として、指導教員をはじめとする教員、周囲の大学院生、他大学の研究者や院生、大学外の人たち、学生相談室、ALC/附属図書館のピアサポーター(ALSA)等があげられます。相談内容によって、どの人に相談した方が良いかは異なりますし、同じ内容の相談を異なる人にしてさまざまな視点からのアドバイスを得ることが必要な場合もあります。
指導教員
大学院における指導教員とは、修士論文、博士論文の執筆にむけて、学生の研究状況を把握し、研究段階に即して指導・助言・支援をする人物です。
学生は指導教員の指示を待つのではなく、主体的な研究活動を行う必要がありますが、一人で研究を進めていると、独りよがりな研究になってしまったり、本当にこれでよいのだろうかと悩んでしまい、研究が停滞してしまったりすることもありえます。そのため適切なタイミングで指導教員と相談しながら研究を進めていくことが必要です。
さまざまな指導スタイル
研究分野や指導教員の考え方により、様々な指導スタイルがあることを把握しておきましょう。近田(2018)によると、指導スタイルには
- 学生を研究室のプロジェクトに参加させることを通じて、当該分野の専門家としての職務を進めるうえで必要な機能を果たせるように導くスタイル
- 教員と学生が一対一で議論をしながら研究内容を深めていくスタイル
- 学生には基本的に自由に学ばせ、必要に応じて助言、アドバイス、支援をするスタイル
などのいくつかの類型があるとされます。
いずれのスタイルでも、学生側から状況を聞くことで、指導教員は研究の進捗状況を把握します。
定期的に面会したり連絡をとったりすることで、研究指導がより円滑に進められる可能性が高まります。また、学部生の段階からゼミに参加したり先輩から話を聞いたりすることで、指導教員の指導の特徴や研究室の様子を知ることができます。
特に、他大学の大学院に進学する場合、進路先の検討時に、指導を受けたい教員にコンタクトを取り、自分がどのようなテーマで研究しようと考えているのか伝えたり、進学先の教員や研究室がどのような研究、どのような指導を行っているかについてあらかじめ知ったりすることで、新しい環境に適応しやすくなります。
指導を受けたい教員との面会や連絡ばかりでなく、大学院の入試説明会や研究室訪問の機会等への参加も有益です。
指導教員チーム
学府・研究科によっては、大学院生の指導について指導教員チーム体制がとられている場合があります。
指導教員チームとは、主指導教員だけでなく、1人以上の副指導教員を設け、複数人で学生を指導する体制のことをいいます。多様な観点からの指導・アドバイスが受けられるといったメリットがあります。
指導教員チームとの関わり方の例(人文公共学府博士後期課程院生の事例)
- 主指導教員
自分の専門に最も近い研究をされています。問題設定や研究史整理の仕方、史料に関する情報提供、史料読解、結論の妥当性等、指導教員の専門をいかした指導をうけています。また、専門の近い研究者や学会の紹介もしてもらっています。 - 副指導教員2名
異なる地域・時代を専門とする教員です。問題設定を固める、基本的な事柄の確認。副指導教員のうち1名からは史料読解についても学んでいます。また複数の意見を聞いた上で検討したい場合の相談先にもなっています。
大学院生や身近な研究者
さらに、より気軽に話しやすい相談先としては周囲の大学院生があげられます。院生同士のつながりは重要です。院生の人数が多い場合、研究室内で先輩が後輩に教えるシステムが出来上がっている場所があるでしょう。そういった場所では研究や進路について、指導教員に相談する前に院生や世代が近い研究者に相談を持ち掛けやすいかもしれません。
指導教員とは異なるキャリアを歩んできた研究者の見方や、学友との日ごろの雑談の中に何か解決のヒントがあるかもしれません。周囲の人と日常的にコミュニケーションをとることを心掛けてみると良いでしょう。
学生相談室
修学・就職・生活・人間関係など、学生生活にかかわる問題について、どんなことでも相談を受け付けています。カウンセラーやグランドフェロー(千葉大学に長年勤務し退職した後、学長の委嘱により学生相談を担当している先生)などが相談に応じてくれます。
ALC/附属図書館のピアサポーター(ALSA)
附属図書館N棟2階には学習相談デスクがあり、勉強や研究をすすめていくうえでの、考え方や勉強の仕方などを相談できます。学習相談担当者(千葉大学の大学院生)が、対面/オンラインで、一緒に悩み、考える手助けをします。
また、附属図書館のN棟3階には、PCサポートデスクがあり、PCに関わる操作全般、WordやExcelなどソフトの基本的な使い方を相談できます。 Moodleなどの操作で困ったこともサポートします。アカデミック・リンク・センターで技術支援を行っている千葉大学の学生が対面/オンラインで相談に乗ります。
大学外の人たち(アカデミック外)
広い視野をもつためには大学外の人たちともつながりを持っておくことも大切です。例えば、異なる分野の近い世代の人のもつ情報が参考になることもあります。
本当に困っていたり、どの人に相談した方が良いかわからなかったりする場合は、まずは話しやすい人(院生、身近にいる研究者、副指導教員etc.)や学生相談室に相談した方が良いでしょう。
3. 何を相談するか
大学院生が在学中に指導教員をはじめとする周囲の人に相談することがらとして、以下のような項目が考えられます。
- 研究計画
- 研究全体の方向性
- 論文の構想、執筆、投稿
- 学会参加(どの学会に行くか、応募、入会の推薦、作成の指導)
- 他の研究者への紹介
- 奨学金の申請等、指導教員のサインが必要な手続き
- 学振等への応募
- 進学や就職など進路に関すること
- 困っていること、気がかりなこと
相談にあたってあらかじめ知っておくとよいこと
- 指導教員をはじめ、他者との相談は、唯一の答え(正解)を得るのではなく、研究について、調べ方や方法、選択肢に関するアイディアを得る機会です。独立した研究者として成長できるよう依存しすぎないことも大切です。
- 教員の言うことがいつも正しいとは限らず、ひとつの「意見」として受けとるべきときもあります。指導方法や研究遂行方法が適切でないと感じた場合は「5.指導教員との関係がうまくいかなくなったときには」も参照してください。
- 大学院の手続きや制度に関しては、必ずしも教員が正しい情報をもっているとは限りません。手続きや制度については、所属学府の学務系の部署に相談した方が良いこともあります。
- 指導教員の去就(定年退職や異動などの予定)についてもできるだけ把握しておきましょう。
以下では、研究や進路に関してどんなことが相談できるかについて具体的な例をあげながら見ていきます。
①研究内容に関すること
以下のようなことについて相談ができます。
- 問題設定の方向性
- 読むべき先行研究、先行研究の整理
- データや史資料の収集・所在に関する情報
(どこにあるか、刊行されているか、図書館を通じて入手できるか、指導教員が持っていないか?) - 研究手法の適切さ
- 史資料から得られた情報や実験結果の解釈の仕方等
まずは自分で研究に取り組んでみます。しかし、研究の方向性について悩んだり、困ったりしている場合、簡単なレジュメでよいので、現在どのような研究をしているか・どこで迷っているかをまとめてみましょう。
それを基に教員と議論することで、教員からの専門知識を生かしたアドバイスを得たり、研究上のアイディアを思いついたりすることが期待できます。学会等に関する情報提供、教員が持つ人的なネットワーク紹介をしてもらえる場合もあります。
②修士論文・博士論文執筆までのスケジュールに関すること
研究計画上、調査・フィールドワーク・実験が必要になる場合、いつ、どのタイミングでそれらの活動を行えばよいか、どのくらいの費用がかかるかを指導教員と十分に相談しておきましょう。文系・理系ともに、これらの研究活動を実施するために、いつ、どういった研究助成に応募するかも話し合っておくと良いでしょう。
③書類の提出、奨学金、学振、助成金等への応募に関すること
これらの奨学金や助成金に応募する場合は、指導教員には早めに提出・申請のスケジュールを伝えます。指導教員は様々な仕事を抱えているので、余裕をもって書類を作成し相談するよう心がけましょう。推薦書等を書いてもらう場合には、まずこれらの申請書類を仕上げたうえで、その内容に基づいて書いてもらいます。
④進路に関すること
修士課程の学生の場合
- キャリア(就職するかどうか)に加え、進路(千葉大以外の博士課程に進学するか)を早めに相談しておきましょう。
- DC1を含む、学修を継続し、実績を証明するための機会への応募を検討してみましょう
- 進学を希望する場合は、博士課程修了後の進路について、どのような進路がありうるかイメージを持っておきましょう。
博士課程の学生の場合
- DC2やPDへの申請を検討してみましょう。
- 博士課程修了後の進路について相談しましょう。(研究職につく、学術に関わる仕事につく、一般企業へ就職する、高校教員になるなど)どのような進路がありうるか事前に調べてみましょう。
- 身近な先輩の経験談を聞くことも良いでしょう。(就職状況は世代によって異なるため、なるべく直近の情報を入手しておくと良いでしょう)
- 身近な人でモデルになりそうなキャリアを歩んでいる人を見つけ、話を聞いてみましょう。
キャリアについては大学院共通教育として以下のような授業も開講されています。必要に応じて受講しましょう。
⑤困っていること、考慮してほしいこと、ライフプランやプライベートな事柄に関すること
現在困っていることや修学上考慮してほしいことなどは、早めに指導教員をはじめ周囲の人に相談すると良いでしょう。何かしらの情報をもらえたり、事情を考慮した対応をしてもらえたりするかもしれません。
また、上記①~④のような、研究や進路に直接関係する事柄以外でも、結婚、出産、育児、親の介護等や自分自身の体調などについて相談したい場合もあるでしょう。そういった事柄で、身近な人に相談しづらい場合は、学生相談室へ相談してみると良いでしょう。
4. 相談のタイミング、相談前の準備、相談後に行うこと
以下では、研究や進路に関する相談のタイミングや、相談前にどんなことを準備したらスムーズに相談できるか、相談後に行った方がよいことについてご紹介します。
①相談のタイミング
研究内容についての相談のタイミング
ゼミナール(以下ゼミ)での研究報告で指導教員に定期的に進捗を示すなどの方法が考えられます。また、ピンポイントで分からないことはゼミでの発表を待つのではなく、直接質問した方がよい場合もあります。内容によっては、同じ分野を専攻する院生等、より話をしやすい人に相談することもありえます。ゼミがない場合は、個別に教員にアポイントを取って相談をしても良いでしょう。
相談の例(人文公共学博士後期課程院生の事例)
私の場合は外国語研究文献、史料の訳し方などは、個別に相談していました(時間をとって一緒に読んでもらっていました)。教えてもらううちに、自分でできるようになってくる気がします。修士論文・博士論文執筆までのスケジュールについて相談するタイミング
年度の始め、学期の始めに年間、学期あるいは課程の研究計画を提出しましょう。指導教員と学生の個別の相談になるため、学生自身が期限を決めて相談を持ち掛けましょう。
千葉大学は年間研究計画を事務に提出する必要があるので、それをしっかり書く必要があります。
以下の事柄は研究を開始する前に、早めに指導教員と話し合っておくと良いでしょう。
- 相談の頻度(→「定期的」にあるのか。毎回、次回の日時を確認)
- 連絡方法
- 何を相談するか
- 自分はどのような研究に関心をもっているのか
- どのようなキャリアを進もうとしているのか
- 気がかりなこと
②相談前の準備
相談前には以下のようなことをしておくと良いでしょう。
- 相談材料となる何かを用意する。
(相談したいことをまとめたメモや執筆中の論文原稿など) - 教員へ相談日時の確認の連絡を取り事前に資料など見てもらいたいものがあれば送る。
- 原稿を見てもらう場合は、相談前に自分自身で文章表現レベルの内容は見直しをし、相談がスムーズに進むようにしておく。
※他方で、ハードルを上げすぎない(これでは見せられない、とキャンセルを重ねない)。
③相談後に行うこと
早いうちに、どのような指摘があったかをまとめなおし、研究計画や原稿などの修正方針を検討しましょう。もらった指摘のまとめや自分の考えた方針などを教員にも送っておくとよりよいでしょう。
5. 指導教員との関係がうまくいかなくなったときには
人間関係等で悩んだ場合は、まずは学生相談室に相談してみましょう。指導教員などとの人間関係について、相談者と一緒に考えたり、適切な相談先を紹介してもらえたりします。
参考文献
- 近田政博『シリーズ大学の教授法5 研究指導』玉川大学出版部、2018
- エステル・M・フィリップス、デレック・S・ピュー『博士号のとり方 : 学生と指導教官のための実践ハンドブック[第6版]』名古屋大学出版会、2018
この記事は千葉大学の大学院生(分野別学習相談担当:ALSA-LS)が執筆し、アカデミック・リンク・センター等千葉大学の教職員が監修しました。また、執筆にあたっては学生相談室の協力を得ました。