2021年度第5回アカデミック・リンク/ALPSセミナーは、「誰もが安心して著作物が利用できる環境を目指して」という題目で、福岡教育大学の大和淳氏を講師として開催されました。まず、著作権制度の全体像が説明され、著作物を利用するにあたっては、著作権者の許諾を得て利用するケースや、著作権を制限する例外規定が適用され、その条件の範囲で利用するケースなど、いくつかのパターンがあることが述べられました。また、改正著作権法第35条により、授業での著作物利用において具体的にどういった場合に著作権者の許諾が不要となるのか、あるいは補償金の支払いが必要となってくるのかといった点が説明されました。
そのうえで、今後高等教育関係者が考えていく必要がある事項が4点挙げられました。すなわち、1)情報化によりコンテンツの入手が簡便になったものの、それによりコンテンツの価値が下がったり、創作者の負担が減ったりするわけではないことを認識し、創作者、流通者、利用者の間で負担のバランスをとっていく必要があること、2)著作権法第35条が適用されない利用行為に係る許諾契約を円滑にしていくために、教育現場における著作物の利用に関する正しい理解の普及・及び定着による、権利者との信頼関係構築が不可欠であるということ、3)大学教員等は著作物を利用される立場にもなりうるため、それに備えて自身の著作権を適切に管理する必要があること、4)SARTRASによる補償金の分配においては、高等教育関係者や大学等も補償金の受け手になる可能性があるのでそのための受け皿団体が必要であるだけでなく、「著作権等の保護に関する事業等」(著作権法第104条の15)によって大学等で行われる著作権教育などに対しても支出がなされる可能性があることを踏まえ、この事業等への関心を高める必要があること、です。
こうしたことをふまえ、個別のケースへの適切な対応を、教育関係者が各自で判断できるよう、教育現場における著作物の利用についての基本的な考え方を理解していくことが重要であると述べられ、セミナーは締めくくられました。
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