2021年度第1回アカデミック・リンク/ALPSセミナーは、「デジタル・ペダゴジー(デジタル時代・AI時代の教育学)-教育・学修支援者の役割を問い直す」という題目で、北陸大学高等教育推進センター長・教授である杉森公一氏を講師として開催いたしました。
第1部では、主にデジタル・ペダゴジーの概念やヒューマニクスにおける新しいリテラシーについて説明されました。2020年は、コロナ禍により緊急的に遠隔授業が実施されたことにより、AI化が加速し、教育・研究関係者は一斉に、一様にデジタル・ツールを使わざるを得なくなりました。しかし、単なる「置き換え」のオンライン教育は格差助長を加速させてしまいます。デジタル・ペダゴジーとは、「批判的教育学の視点からデジタル・ツールにアプローチすること」にあり、「ツールを熟考して使うことと同じくらい、ツールを使わないと決めること、ツールが学習に与える影響に注意を払うことが重要」となること、こうしたペダゴジーの変化に沿って、機械的な置き換えではない教育・学修支援を展開していく必要があると述べられました。
また、大学のカリキュラム再考の動きが、否応なくデジタル・ツールを使うようになった現在、まさに加速されていること、こうした変化にあわせて、教育・学修支援者は、ヒューマンウェアとしての役割、即ち、人同士だけでなく、ハードウェアと人、ソフトウェアと人同士のネットワークを構築できる役割を、新たに担うことになるだろうと説明されました。
第2部では、対面からオンライン・ハイブリッド・ハイフレックスへのさまざまな転換事例が紹介されました。授業を設計するにあたり、テクノロジーを使ってどのように教育するか(Teaching with Technology)だけでなく、学生がどのように学ぶのか(Learning with Technology)も考える必要があること、とはいえ、ハイフレックスの形式を真に理解し、適切に授業を進められる教員が現時点では限られていることが指摘されました。こうしたなかで、今後、教育・学修支援者の役割としては、授業の組み立て方のみならず、教室の設計や、ハイフレックス実施方法の研修などが求められるだろうと説明されました。また、授業実践者同士をつなぎ結んでいく原理や、新しい役割を考えなおしていくことも今後必要になっていくだろうと述べられました。
最後に、質疑応答とあわせ、これからの大学の実像を結ぶとして、大学教育のリテラシー・能力の再発見、大学の役割の再定義、教員・学生の教育学習設計・支援への再焦点化、学びを支える専門職・担い手の再役割分化といった事柄が提示され、セミナーは締めくくられました。
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