• アカデミック・リンク・セミナー

アカデミック・リンク・セミナー

「高等教育における著作物の利用促進とそれを支援する体制」
ポスター(pdfで開きます)

開催日時・場所

  • 2019年3月18日 (月) 14:00-16:00
  • 千葉大学アカデミック・リンク・センターI棟1階 コンテンツスタジオ「ひかり」

講師

  • 竹内 比呂也
    (「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム(総合フォーラム・専門フォーラム)」共同座長/
     千葉大学アカデミック・リンク・センター長/附属図書館長/人文科学研究院・教授)
    「高等教育における著作物の利用促進とそのための環境整備」
  • 海浦 浩子 氏
    (横浜市立大学学術情報センター)
    「英国の大学図書館における著作物の教育利用と支援」

概要

 2018年度第5回アカデミック・リンク/ALPSセミナーは、「高等教育における著作物の利用促進とそれを支援する体制」というテーマの下、大学学習資源コンソーシアム(CLR)との共催で開催されました。「著作権の教育利用に関する関係者フォーラム」の共同座長を務める当センターの竹内比呂也、著作物の教育利用と支援に関して英国の大学図書館等へ実地調査を行った海浦浩子氏(横浜市立大学学術情報センター)から、上述のテーマに関わる内容でご講演いただきました。

 竹内からは、「高等教育における著作物の利用促進とそのための環境整備」という題目にて、講演が行われました。本講演では、2018年5月の著作権法第35条の改正(「教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備」)に関して、法改正に向けた検討の経緯及び検討過程における議論(教育関係団体及び権利者団体の主な意見)、法改正後の「学校等の授業の過程で著作物の公衆送信を行う際の著作権処理の取扱い」について、説明が行われました。文化庁により補償金徴収分配団体として指定されたSARTRASに一定の補償金を支払うことで授業の過程において著作物の公衆送信が可能となることや、補償金額決定手続のイメージについて説明が行われました。

 以上のような著作権法第35条の改正の説明に続いて、「著作権の教育利用に関する関係者フォーラム」の状況について紹介が行われ、高等教育機関として、「著作物の新しい利用環境における望ましい原則と指針」、「授業」などの範囲、「改正後の第35条の適用・非適用行為の典型例」「授業目的公衆送信補償金(案)に対する意見」を伝えてきたとの報告が行われました。さらに、「授業目的公衆送信補償金(案)」に関する問題点の指摘が行われ、それに対する提案について説明が行われました。講演の最後には、高等教育機関が著作物の利用促進や環境整備に向けて考えなければならないことについて、議論が行われました。

 海浦氏からは、「英国の大学図書館における著作物の教育利用と支援」という題目にて、英国での実地調査の内容を中心に、日本と英国の著作物利用の状況、英国の大学図書館における取組、今後の日本の著作物の教育利用について、講演が行われました。

 英国の著作権管理団体と大学の関係についてですが、英国の著作権管理団体はCopyright Licensing Agency (CLA)であり、著作権団体や出版社団体から複製に関するライセンスを受けており、著作物の利用者から徴収したライセンス料から管理手数料を差し引いた料金を権利者団体に分配しています。一方、著作権交渉団体についてですが、Universities UK(UUK)に設置されたThe Higher Education Copyright Negotiating and Advisory Committee(CNAC)という団体が、英国の9割以上の高等教育機関の代表として、CLAとライセンス交渉を行っています。

 次に、大学における取組事例としてミドルセックス大学とブルネル大学が取り上げられ、大学図書館における著作物の教育利用と支援について説明が行われました。英国の大学図書館では、①教育目的で利用する著作物の管理、②講義等で使用する著作物の提供、③著作権に関する啓発活動の三つの役割があります。一つ目の教育目的で利用する著作物の管理については、多くの大学では、図書館が著作物の管理者を務めており、教育目的で使用される著作物の把握、ライセンス契約の管理、CLAライセンスに含まれない著作物の対応といった役割を担っています。二つ目の講義等で使用する著作物の提供については、大学図書館が所蔵している著作物を講義で使用するデータ(利用可能な著作物のPDF化など)として提供する役割があります。

 最後に、以上のような英国での調査を踏まえて、日本では、著作権に対する大学ごとの意識に違いがあること、利用者への啓発が不足していること、誰が著作権処理を管理するのかが曖昧であるといった指摘がなされました。加えて、日本の大学において著作物の教育利用は誰がサポートするべきなのかとの問題提起が行われ、図書館は、教育に利用する著作物を所蔵しており、著作権に関する動向にも明るく、利用者への著作権の啓発活動も行いやすいといったことが論じられました。

アンケート結果