このページでわかること
- 研究データを管理するとは?(何をどのようにおこなうのか)
- データマネジメントプランとはなにか
目次
1. はじめに
学術出版社(ジャーナル)の方針や政策の変化によって、論文だけでなくその根拠となる研究データの公開や、公開を前提とした管理が求められています。たとえば、日本学術振興会の特別研究員や科学研究費助成事業の要項などにも言及があります。
これから研究者になるみなさんは、こうした状況の変化を踏まえつつ、自分の研究の過程や結果に責任を持つためにも、適切に研究データを管理しましょう。
ここでいう「研究データ」がどういうものかに関しては、「研究データとは」の記事をご覧ください。
2. 研究データを管理する
さて、もし、みなさんが論文を投稿して、査読者から関連する研究データを公開するように、と言われたらどうしますか?
ある日突然、研究データの公開を要請されても焦らないですむように、事前に取り扱いを考えておくことが重要です。
研究の実施から終了後までのすべてのプロセスにおいて、研究データの取り扱いを考えて実践することを「研究データ管理(Research Data Management; RDM)」といいます。
より具体的には、
- ファイルやフォルダに適切に名前を付けたり、構造化したり、整理したりする
- 研究の実施中や終了後に、研究データを保存・バックアップする
- 研究データにアクセスできる範囲を決めて制限する
- その研究データの概要情報を整理したり、利用に必要な事項を文書化したりする
- その研究データをだれかと共有したり、だれかに提供したりしてよいかを決める
- 研究データに関係する人や権利を確認する
- 研究データの品質を管理する
など、いくつもの行為や観点があります。
そのため、みなさんが普段の研究活動のなかであまり重要/特別だと思わずに実践していることも、含まれていると思います。また、みなさんの研究室においても、規定または推奨されている試・史・資料の取り扱い手順や方法があるでしょう。
それらを踏まえた上で、これから研究を行うみなさんは、論文投稿や出版をするときの研究データ公開にそなえて、研究プロセス全体を通じて、下記の点を意識した研究データの取り扱いを行う必要があります。
- 今扱っている研究データについて、第三者と共有したり、一般に公開したりしてよいのか考えておく
- 共有や公開のメリットやリスクを考えてみる
- どんな状況や研究データなら共有や公開ができるのか想像してみる
- これらの判断が必要なとき誰に相談するのか考えておく
- 1年後や3年後、だれかに質問されてもいいように、かつ自分でも振り返りが容易なように、研究データを整理しておく
といったことから意識していきましょう。
3. データマネジメントプランをつくる
さらに、研究データを取り扱う方針や方法をあらかじめ言語化し、自分自身だけでなく関係者と共有しておくことも重要です。
そのための文書が「データマネジメントプラン(Data Management Plan; DMP/データ管理計画)」です。研究の一連のプロセスにおいて研究データをどのように取り扱うかを文書化し、研究の終了時まで更新し続けます。よってデータマネジメントプランは研究データに特化した研究計画書と言えます。
データマネジメントプランの主な記載事項には、
- 研究データに第三者も理解できる名前をつける(名称)
- その研究データは、どのような競争的研究費等の研究プロジェクトによるものか
- その研究データを、誰がどのような方法で収集・生成するのか
- 研究を進行する中で、そのデータを誰がどのように用い、保管するか
- 研究の終了後は、そのデータをどのように長期保管するか
- その研究データは第三者の利用をみとめるか。みとめる場合、誰にどのような方法で利用させるか(公開や非公開の判断、第三者と共有する範囲)
などがあります。
競争的研究費においては、その採択後に研究計画とともにデータマネジメントプランの作成を要請されます。このとき競争的研究費の配分機関ごとに様式が示されます。
4. 公的な競争的研究費の配分機関における方針
公的な競争的研究費の配分機関が研究データや研究成果についてどのような方針を示しているのか見てみましょう。
日本学術振興会
データマネジメントプランの定義
「データマネジメントプラン」(以下「DMP」という。)とは、研究データの保存・管理、並びに、公開・共有、利活用に関する方針を定める計画書をいう。
方針
振興会が交付する研究資金で行われる研究活動の責任を負う研究者(以下「研究代表者等」という。)は、各事業の求めに応じて、DMPを作成するものとする。
科学技術振興機構
データマネジメントプランの定義と方針
研究プロジェクトの研究活動計画に責任を負う研究者(以下、「研究代表者等」と呼ぶ。)は、研究プロジェクトによって生産された研究データ(以下、「研究データ」と呼ぶ。)の取扱いを定めたデータマネジメントプランを作成し、遅くとも研究を開始するまでに JST に提出するものとする。
その他省庁
これらは例ですが、他の機関においても同様に、成果の取り扱いに関する方針が定められ、データマネジメントプランの作成を求めています。様式は機関によって異なりますが、記入する基本的な事項は共通しています。獲得したい資金の実際の様式も確認してみてください。
ほかの省庁や資金配分機関の方針などについては「省庁や競争的資金の配分機関等における研究データ等の取り扱い方針(リンク集)」の記事にまとめています。
このような方針を見ると、データマネジメントプランは競争的研究費を得たひとだけが書くもののようにも思えます。しかし、基本的な記載事項はみなさん自身やみなさんが研究室メンバーとデータを取り扱ううえでも、基礎的で重要な観点となっています。
適切・公正に研究をおこなうためにも、研究データの取り扱いを文書化したり、データマネジメントプランを作ったりすることをおすすめします。
5. まとめ
研究データ管理やデータマネジメントプランの作成は、
- 研究者として、研究をおこなううえで適切にデータを管理するためにおこないます
- 研究者として、公的な研究費をえるため、かつその成果である研究データを適正に取り扱うために重要です
このように、みなさんがこれから研究をおこなっていくうえで必要不可欠です。
日頃の研究活動においても、研究データの取り扱いに意識的になりましょう。
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