留学・海外調査 (計画の立て方編)
このページでわかること
- 留学にあたってどんなことを考えて準備すればよいのか
- 留学のための情報収集の手がかり
はじめに
ひとくちに留学といっても、その目的は人によって様々であり、例えば、語学の習得・海外の大学での学位取得・フィールドワークなどの研究調査などがあげられます。研究分野によっては、海外での調査活動が欠かせない場合もあれば、必須ではないものの、異なる環境で研究してみたいという理由から留学を目指す場合もあるでしょう。
この記事では、千葉大学の大学院生が、自身の研究を遂行するために行う留学(数か月~数年スパン)を計画するにあたり、具体的に何を考えればよいのかを説明します。短期の語学研修や、海外の大学での学位取得(ダブルディグリー)の話は含みません。
本記事で紹介するのは以下の5点です。
1から4は、留学までのおおまかな準備の流れです。留学のためには様々な準備が必要で、検討し始めてから実際の渡航までは1~2年はかかると考えておくのがよいでしょう。ケースによってはもっとかかることもあります。例えば奨学金に応募する場合は結果通知までにある程度の時間がかかるのでそれを見込む必要があります。もちろん、身近に留学経験者がいて情報をもらえる場合など、より短縮できることもあります。
5は、千葉大学の制度、留学先大学の制度、奨学金、出入国や滞在に関する規定など、様々な情報を集めるために役立つ情報源を紹介します。調べていくなかで、どうやって進めればよいか分からない場面に多々遭遇すると思います。例えば現地での具体的な暮らし方など、自分だけではなかなか知りえないこともありますし、留学先の大学や教員と外国語でコンタクトをとる必要もでてくるでしょう。このため、留学計画を立てる際には、自分で調べることに加えて、指導教員や、留学経験のある研究仲間に相談しながら情報収集をすることをお勧めします。
留学目的の明確化
留学計画を立てる上で重要なことは、留学の目的を明確にすることです。目的は、留学先の選定や、現地での活動計画、さらには奨学金に応募する際の申請書の内容にも関わってきます。
まずは、
- 何のために留学するのか
- 留学先で何をしたいか
- 研究を進める上で留学がどのように位置づけられるのか
- 留学によって何が得られそうか
といった点について、情報収集をしながら、具体的なイメージを持ちましょう。
以下に挙げるのは、留学目的の一例です。
- 研究分野をリードする研究者の下で学びたい
- 研究環境や設備がより整備されている大学や研究室で学びたい
- 日本とは異なる研究潮流や、研究手法に触れたい
- 海外でのフィールドワークや、資料調査を実施したい
研究分野によっては、留学を通じて、滞在先の言語や文化、社会について理解を深めること、現地の人びとと交流を持つこと自体が研究上の財産になることもあります。さらに、海外の研究者とのネットワークづくりも留学の意義の一つです。
留学先を探す
1. 留学先の選定
留学先の選定方法は、留学目的により大きく2つのパターンに分かれます。
- 特定の国や地域を対象とした研究を行っており、フィールドワークや資料調査を行うために、その国や地域に留学する。
- その研究分野の中で、第一線で活躍する研究者が所属している、あるいは、その研究分野に力を入れている(研究施設や環境が整備されている)大学を選定して留学する。
1.の場合、留学する国や地域はある程度定まってきます。2.の場合、留学先を自分で調べて探さなければなりませんが、渡航先に長期間滞在するためには、大学や研究機関などに何らかの形で在籍する必要があることがほとんどです。そのため、所属する大学や研究機関を探すという点は、①も②も共通しています。では、そのような受入機関はどう探せばよいのでしょうか。
2. 受入機関を探す
千葉大生が受入機関を探そうとすると、例えば以下の方法があります。
- 千葉大学の協定校から探す
- 論文や研究書を読み、自分の研究に近い研究を行っている研究者・研究室を探す
- 千葉大学留学生課留学支援室の「留学相談」を利用する
- 指導教員や、知り合いの研究者に相談する
- 国際学会等で面識がある海外の研究者に相談する
- 留学生の受入経験があり、国際交流の活発な研究室を選ぶ
留学目的を達成するために適切な受入先を探すことが第一ですが、研究室の様子や、留学生支援体制、所在地の生活環境なども考慮すべきポイントです。
「留学生の受入経験があり、国際交流の活発な研究室を選ぶ」というのは、自分が興味のある分野の中から、先輩が何人も留学していたり、留学生を多く受け入れていたりする研究室を選ぶということです。そのような研究室であれば指導教員に留学の相談もしやすく、また既に様々な受入機関とのつながりがあり、比較的スムーズに留学することができると考えられます。
3.どのような制度を利用するか
ここでの制度とは、千葉大学や留学先の大学が提供する留学プログラムやコースのことを指します。どういったプログラムがあるのかを、自分なりに調べてみましょう。千葉大学の海外派遣留学プログラムを利用することも、留学の一つの方法です。
この時、あわせて留学先にはどのような資格・立場で所属するのかを確認することも重要です。自身の留学目的を達成するためにはどのような在籍形態が適切かをよく考えましょう。
例)
- 留学先大学の教育内容に魅力を感じているので、授業を履修し単位を取得する形での在籍形態が望ましい場合→留学先大学で単位を取得し、さらに千葉大学と単位互換できるような制度はないか調べる。
- 文書館での文献調査やフィールドワークを行いたいので、大学の授業には重きを置かず、自身の調査活動に時間を費やせるような形での所属が望ましい場合→授業履修の義務はなく「客員研究員」のような形で在席できる制度がないか調べる。
場合によっては留学先の大学での単位取得が必須となることもあります。なお、この点は留学にあたって利用する制度で規定されている場合がありますので、募集要項等を熟読し、制度の内容や条件を理解しておくことが大切です。
留学費用の確保
留学を希望する学生に向けて、大学や国、自治体、民間団体は様々な経済的支援制度、奨学金制度を設けています(給付型もあります)。研究分野や渡航先により様々な制度がありますので、自分にあったものを探しましょう。なお、奨学金・助成金の多くは公募・審査のうえで受給者が決定されます。応募の際に、申請書、語学能力証明書や推薦書、受入意思確認書といった様々な書類の提出を求められますので、スケジュールを意識しながら動きましょう。
申請書作成の際に重要なのは、留学の目的、自身の研究における留学の位置づけ(これまでの研究と留学先での今後の研究活動の関連性)、留学により期待できる成果について、わかりやすく表記することです。業績一覧や語学能力証明書の提出が求められる場合もあります。当たり前ですが、日々の研究、学習の積み重ねが大切になってきます。
渡航までの準備
1. ビザや住居等
受入機関や留学費用のめどがついたら、出入国にあたっての手続きや準備(一人暮らしの場合は、現在の住居をどうするか等)を進めることになります。詳細は留学・海外調査(現地での生活編)を確認してください。
2.留学先への研究情報・研究機器などの持ち出し等について
留学に関して、次のような事柄が安全保障輸出管理の対象となる可能性があります。 該当する場合は注意しましょう。
- 日本から留学先への研究情報や研究機材・サンプルなどの持ち出し
- 留学先で取得した実験データの日本への持ち帰り
安全保障輸出管理とは、日本を含む国際社会の平和を維持するために、武器や軍事目的に転用される可能性がある特定の貨物や技術が、大量破壊兵器などを開発している国やテロリストなどの手に渡らないようにするための管理制度です。
留学が決まったら、安全保障輸出管理についての説明ページも参考にして指導教員に相談し、手続きを行いましょう。
また、留学先で取得した実験データなどの取り扱いについては、留学先の研究室に確認しましょう。
留学に関する情報の収集
留学を実現するためには、これまで述べてきたように、様々な情報を収集しなければなりません。いくつか参考になるwebサイト、書籍を紹介します。
1. 千葉大学で提供している留学関連情報
- 千葉大学留学生課留学支援室
千葉大学の留学プログラムや協定校のプログラム、経済的支援、体験談、安全情報など留学に関する情報が一通りまとめられています。千葉大生で留学を考えるなら、まずはチェックしてみましょう。具体的な相談もできます。
2. その他広く情報収集するために
- 海外留学支援サイト
日本学生支援機構(JASSO)が運営するサイトです。留学に関する様々な情報が集められています。留学先の検索や奨学金の検索も可能で、留学に関する説明会やセミナーなど、イベント情報も頻繁にさら新されています。 - トビタテ!留学JAPAN公式サイト
- 日本学術振興会 若手研究者海外挑戦プログラム
- 日本学術振興会 海外特別研究員制度
3. 書籍
本記事の作成にあたっては以下の書籍を参考にしました。
- UJA(海外日本人研究者ネットワーク)編『研究留学のすゝめ! : 渡航前の準備から留学後のキャリアまで』羊土社 , 2016.12
- 是永淳『できる研究者になるための留学術 : アメリカ大学院留学のススメ』講談社, 2019.9
- 水口拓寿, 胎中千鶴編『もっとアジアを学ぼう : 研究留学という生き方』(ブックレット《アジアを学ぼう》, 別巻4)風響社, 2012.10
また、千葉大学附属図書館には、留学に関する資料をまとめたコーナーも設けられています。そちらも是非活用ください。
参考文献
上記3.で紹介した資料に加えて以下のwebサイト
「研究留学に関するアンケート2013」https://www.uja-info.org/post/_r004
この記事は千葉大学の大学院生(分野別学習相談担当:ALSA-LS)が執筆し、アカデミック・リンク・センター等千葉大学の教職員が監修しました。