留学・海外調査 (現地での生活編)

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電球アイコンこのページでわかること

  1. 留学先で安全・健康に生活するために知っておきたいこと
  2. 留学先での生活に向けて情報収集しておきたい事柄とその調べ方
  3. 留学前に準備しておきたいこと

はじめに

この記事では、留学や海外で調査を行うにあたり、安全・健康面で知っておきたいこと、現地での生活のために準備しておきたい事柄について解説します。

この記事は、「①大学院生が②欧米等の一部の国に③長期留学する場合」を想定して書かれていますが、①~③の条件のどれか、または全てに当てはまらない場合も参考にできるよう、可能な限り補足情報を記載しています。ご自分の留学計画を基本とし、情報収集や準備を進めるなかで、適宜記事の内容を参照してください。

目次

  1. 留学先で安全・健康に過ごすために
  2. 留学先での生活基盤を整える
  3. 留学前の準備

1. 留学先で安全・健康に過ごすために

事前の情報収集

渡航先の状況に合わせて、詳しい下調べを進めます。渡航先の状況について詳しく知るには、外務省が運営する海外安全ホームページが最初の一歩として便利です。このホームページでは、世界各国の治安情報、医療情報、必要なビザなどの基本データを確認することができます。「たびレジ」や「オンライン在留届」の登録もこのホームページから行えます。各国の医療情報について、より詳しくは外務省Webサイト世界の医療事情が参考になります。

留学先の環境について、より詳しく知るためには、書籍などの情報が有用です。観光客向けの一般的なガイドブックのほか、その国への留学経験がある人が書いた、特定の国についての留学案内となる書籍も多数あります。こうした書籍では、現地での大学生活や長期滞在するにあたって注意すべきことを、より詳しく知ることができます。附属図書館でもこれらの各種ガイドブックを集めており、本館L棟2階の留学支援コーナーや、電子ブックで読むことができます。

留学支援コーナーの写真

同じ地域に留学した経験がある、または現在留学中の先輩や、研究者にコンタクトを取って、話を聞いてみるのもよいでしょう。ガイドブックなどの情報源だけでは知ることのできない情報が得られるかもしれません。

千葉大学での情報収集

千葉大学の留学生課留学支援室では、海外安全ハンドブックを作成しています。このハンドブックでは、海外への渡航~現地での生活~帰国までの各場面について、安全上注意すべきポイントがまとめられています。まずはこうした資料を読み、海外で安全に暮らすにあたって、気を付けておきたいポイントを身につけましょう。

大学が主催するガイダンスでも、海外渡航時に注意すべき各種のポイントや、海外で健康に過ごすための知識について紹介しています。直近でガイダンスの開催予定があるかを調べてみましょう。過去のガイダンスの動画は学内向けに公開されています。

予防接種、健康状態のチェック

留学にあたっては、「予防接種歴」、「血清抗体価証明」、「健康診断証明書」などの英文証明書を留学先に提出する必要があります。これらの証明書は、総合安全衛生管理機構で発行してもらうことができます(無料)。証明内容は、渡航先(国・地域)、大学、滞在期間などにより異なるため、留学が決まったら余裕をもって相談に行きましょう。要求されている証明内容または様式、母子健康手帳(子どもの頃のワクチン接種歴確認のため)、学内発行のワクチン手帳(学内でワクチン接種した際などに発行)などを持参すると良いです。

渡航先の国によっては、現地でかかりやすい病気の予防接種を、事前に受けてから渡航することが推奨されています。総合安全衛生管理機構への相談で必要なワクチン接種が漏れていることが分かった場合、トラベルクリニックで必要なワクチンを接種しましょう。国内のトラベルクリニックについては、日本渡航医学会のWebサイトで調べることができます。また持病がある人は、かかりつけ医に留学中の対応を相談しておきましょう。

海外安全ハンドブックには、自分の健康状態についてまとめておくことができる「My Health Record」が付録として付いています。こうしたチェックシートを活用して、普段服用している薬、アレルギーの有無、持病などについてまとめておくと、現地の医療機関でスムーズに自分の状態を伝えられます。

母子手帳の記録は、留学前のワクチン接種歴の確認だけでなく、留学先で医療機関にかかる際にも利用できます。日本語の母子手帳は、そのままでは海外の医療機関などで使用できませんので、出国前に専門業者に翻訳を依頼する必要があります(有料)。時間の余裕を持って依頼しましょう。

医療制度の違いについて

渡航先の国の医療制度については、事前に正確に知っておく必要があります(上記の世界の医療事情で大まかに調べることができます)。

例えばイギリスの医療機関は、原則無料の国民保健サービス(NHS)と、全額自己負担のプライベート医療サービスに分かれており、6ヶ月以上の滞在の場合はNHSを利用できます。NHSは常に混雑しているため、即時の診療を受けることが難しく、専門的な医療を受ける場合には、まず総合診療医(General Practitioner (GP)。「家庭医」とも言います)の診察・紹介を受ける必要があるなど、日本での病院のかかり方とは異なる点が多くあります。

こうした医療制度や病院のかかり方の違いを知った上で、留学時に現地で早急にかかりつけの病院を見つける、現地の医療保険制度に加入するなどの対応を取りましょう。特に長期留学の場合は、このような準備が大切です。

ワクチン接種証明書・陰性証明書

新型コロナウイルス感染症の流行を受け、世界各国では外国からの入国者に対し各種の条件を課しています。入国時に必要とされる書類として、ワクチン接種証明書や陰性証明書が挙げられます。

ワクチン接種証明書は、紙のほか電子版も発行できます。

紙での発行の場合は接種を受けた際に住民票のある市町村(通常は接種券の発行を受けた市町村)に申請します。

電子版の申請はスマートフォンで行えますが、「マイナンバーカード」が手元にあることが条件です。「マイナンバー通知カード」はこの申請には利用できません。

ワクチン接種証明書について(厚生労働省)

入国できる者の条件や必要な書類は、渡航先の国によって変わり、今後の状況に合わせて変化します。また、滞在する寮や利用する施設等によっては、さらに現地で行動制限が設けられている場合もありますので、渡航前にはこまめに情報をチェックするようにしましょう。外務省海外安全ホームページに特設サイトが設けられていますので、こちらで概要を確認した上で、詳細や不明点については、現地の日本国大使館や、各国当局のウェブサイトで調べるとよいでしょう。

子どもの健康状態確認のために(母子手帳)

家族や子どもを連れて長期留学をする場合、本文で説明したような準備に加えて、子どもの健康状態やワクチン接種履歴を証明するための資料として、子どもの母子手帳を翻訳したものの準備も重要です。

母子手帳の記録があると、子どもの体調不良の際に、スムーズに現地の病院にかかることができます。また、ワクチン接種の記録が確認できないと、現地の学校・保育園等への入学・入園許可が下りない場合があります。

海外旅行保険

国によっては医療費が非常に高額になります。留学生向けの海外旅行保険には、必ず加入しておきましょう。

健康に関する不安(慢性疾患など)がない人の場合でも、普段と違う生活環境(食べ物・水・気候など)や、ストレスのために思わぬ病気にかかる場合があります。万全な備えをしてから渡航しましょう。

海外旅行保険は千葉大の生協で取り扱っているものをはじめ、各種保険会社で取り扱いがあります。補償内容をよく確認して、自分に合った保険を選びましょう。補償内容については、日本損害保険協会のWebサイトが参考になります。

留学期間が1年未満、かつ国民健康保険の加入者である場合や、家族が健康保険制度の被保険者で、留学する人が被扶養者である場合は、海外の医療機関で支払った医療費の払い戻し請求ができる「海外療養費支給制度」も利用することができます。この制度については、年金・健康保険・税金の項で改めて説明します。

また、海外旅行保険による金銭的な補償に加えて、渡航期間をとおして有効となる危機管理サービスにも必ず加入しましょう。詳細は海外安全ハンドブックや、千葉大学留学生課留学支援室のWebサイトで確認できます。

2. 留学先での生活基盤を整える

住まいを探す

留学時の住まいは、渡航先の国や地域にもよりますが、受け入れ先の大学の寮を利用する場合や、自分で住む場所を探す場合もあります。自分で住む場所を探す場合も、留学生向けの寮を利用したり、ホームステイをするなど様々な選択肢がありえます。

セキュリティの確保が最優先ですが、あわせて、自分に合うのはどんなタイプの住まいか(費用面、ほかの留学生や現地の人と交流を希望するかなど)も考えるとよいでしょう。

現地到着後に物件を探す方法もありますが、日本からインターネットを使って住まい探しをし、部屋を押さえることも可能です。

海外で住まいを探す際は、日本で住まいを探す場合とは契約などの慣習が異なることがあり、特にインターネットで探す場合は、物件や立地の下見等は難しいので、次のような事柄を十分確認し、分からない点は大家さんや管理人などに、納得できるまできちんと質問するようにしましょう。

お金の管理

留学先での支払い手段として、次のように様々なものが考えられます。

現地の状況(キャッシュレス支払いがどの程度普及しているかなど)も踏まえて、どのような支払い手段が適しているかを考えます。複数の支払い手段を組み合わせて準備するとよいでしょう。現金の場合は日本円からの両替、バーコード決済の場合はアプリのダウンロード・アカウント登録などの準備が事前に必要です。また、安全の観点から、多額の現金を現地で持ち歩くことは避けましょう。

長期留学の場合、上記のような支払い手段のみで、現地での生活に必要なお金を支払ったり、管理したりすることは難しい場合があります。そのような場合は、現地の銀行で口座を開設しましょう。口座の開設時には、パスポートなどの身分証明書が必要です。また、日本の家族などから、現地の口座に送金してもらう場合は、口座情報が必要になるので控えを取っておきましょう(下記コラム参照)。

どのような支払い手段を使う場合でも、スリ・盗難・紛失には十分注意しましょう。万が一、カード類を盗まれた・紛失した場合に備えて、すぐに使用停止手続きができるよう、カード会社の連絡先と自分のカード番号は常に控えておくことも大切です。

国際送金について

日本にいる家族などから生活費の送金を受ける場合は、自分の銀行口座などについて以下の情報を確認し、送金してくれる家族にあらかじめ伝えておきましょう。日本の銀行で手続きを行ってから留学先の口座に入金が到着するまでは1週間~10日程度かかりますので、時間の余裕を持って送金を頼むようにしましょう

  • 銀行名、支店名
  • 口座名義
  • 口座番号
  • 自分の住んでいる住所(送金申込み書に記入が必要です)

さらに、留学先が欧州(欧州国の自治領および中近東等を含む欧州域)の場合は、以下の情報も忘れずに伝えましょう。これらの情報は口座開設時に教えてもらえます。

  • BICコード(Bank Identifier Code。銀行を識別するためのものです)
  • IBANコード(International Bank Account Number。銀行口座の所在国、支店、口座番号を特定するためのものです)

近年、マネーロンダリングや国外テロ組織への資金提供を未然に防ぐための措置として、国際送金時の送金理由の確認が強化されており、送金理由を説明する書類の提出を求められる場合があります。また、国際送金の送り元となる日本国内の口座について、マイナンバーを登録することが義務付けられています。手続きについて詳しくは、銀行の窓口で相談できます。

適用される為替レートが、手続きのタイミングによって変わるほか、経由銀行で手数料が送金額から差し引かれることにも注意が必要です。

通信手段(スマートフォン・携帯電話)

留学先でスマートフォン・携帯電話を使うには、以下のように、様々な方法が考えられます。渡航先の国の環境や、滞在期間、費用も考えて、自分に合ったものを選びましょう。

スマートフォン・携帯電話の機能は、通話(電話をかける・受ける、SMSの送受信)とデータ通信(LINEや各種SNS、メール、インターネット検索の利用など)の2つに大まかに分けることができます。以下で説明する方法の中には、通話・データ通信の両方に対応できるものと、そうでないものがあるので注意しましょう。

モバイル・ルーターをレンタルする(データ通信)

データ通信を中心に利用する場合には、モバイル・ルーターをレンタルする方法があります。

モバイル・ルーターの場合、1台あれば、スマートフォン・携帯電話以外のデバイス(タブレットやPCなど)もインターネットにつなげられるメリットがあります。ただし、利用できる国の制限や、一日あたりの通信量が制限されている場合もあるので、契約時によく確認しましょう。

この方法を使う場合、通話機能については、以下であげる携帯電話会社の国際電話サービスを使うことになります。

海外用のSIMカードを利用する(通話・データ通信)

海外用のSIMカード(スマートフォンに差し込んで使う小型のICカード)を購入し、スマートフォンに元々入っていた日本国内用のSIMカードと差し替える方法です。

海外用のSIMカードは、国内の家電量販店・携帯電話会社・旅行会社などで購入できるほか、留学先の国の携帯電話会社などでも購入できます。購入の際は、そのSIMカードを利用できる国・通信容量・機能をよく確認しましょう。通話機能が付かないデータ通信専用のSIMカードもあります。

SIMロック(他の通信会社のSIMカードを受け付けない設定)がかかっているスマートフォンの場合、海外用SIMカードを使えるようにするために、事前にSIMロック解除を行う必要があります。自分が普段使っている携帯電話会社に解除を依頼します。SIMロック解除を行ってもらうには、スマートフォンの購入後100日以上経過していることなどいくつか条件があるので、注意しましょう。

また、現地に着いてから自分でSIMカードを差し替えることになるので、差し替えの手順やその際に使うSIMピン(スマホの購入時に付いてきます)などを出国前に確認しておきましょう。

SIMピン(左)を使ってスマホからSIMカード(中央)を取り外した様子
SIMピンを使ってスマホからSIMカードを取り外した図

日本で使っている携帯電話会社の「海外向けサービス」を利用する(通話・データ通信)

日本国内で普段使っている携帯電話会社の「海外向けサービス」(通話・データ通信)を利用する方法です。申し込み方法などは、携帯電話会社のWebサイト・店舗などで確認できます。

通話機能については、適用される通話料金や、電話のかけ方について確認しておきましょう。なお、自分から電話をかける場合はもちろん、日本からかかってきた電話を受ける時にも、通話料が発生することに注意しましょう。

データ通信については、利用できる国の制限や、一日あたりの通信量の制限があるので、契約時によく確認しましょう。

海外用の携帯電話をレンタルする(主に通話)

携帯電話会社や航空会社などの取り扱い業者に申し込みます。データ通信機能付きのスマートフォンをレンタルできる場合もありますが、通話機能のみの端末(ガラケー)の場合が多いです。利用できる国の制限や、国ごとの通話料に違いがあるので、契約時によく確認しましょう。

この場合、普段とは違う電話番号を使うことになるので、出国前に家族・友人に番号を伝えておくようにしましょう。

留学先の大学内で、PC・タブレットをインターネットにつなぐ際は、その大学が提供するWi-Fiが利用できます。利用のためには、ID・パスワードなどが必要になりますので、留学先からの案内を確認しましょう。

短期留学などで、留学先からID・パスワードが発行されない場合でも、留学先の大学や研究機関が「eduroam(エデュローム)」に対応していれば、これを利用して、留学先の大学や研究機関内からインターネットに無料接続することができます。留学先のeduroam対応状況は、その大学のWebサイトなどで確認するか、eduroamの公式サイトでも調べることができます。

eduroamを利用するには、自分の本拠地の大学で事前手続き(アカウント申請)が必要になるので、統合情報センターのWebサイトから申し込みましょう。eduroamのアカウントには有効期限があり、千葉大学の場合は最長で3か月となっています。出発直前にアカウントの有効期限を確認し、必要に応じて再申請しておくことも重要です。

海外でPC・タブレットをインターネットにつなぐには、前述のモバイル・ルーターを使う方法もあります。この方法では、大学以外の外出先(公共交通機関の中、街中など)でもインターネット検索などを利用できるというメリットがあります。複数のデバイスを同時にルーターにつなぐ場合は、一日あたりの通信容量やルーターの電池残量に特に気を付けましょう。

現地で部屋を借りる場合には、インターネット環境が使用できるかを、事前に確認しておくとよいでしょう。

国によっては、無料の公衆Wi-Fiが広く提供されていることもありますが、セキュリティ上の問題もあるので、留学先の大学が提供するWi-Fiなど信頼できるもの以外には安易に接続しない方がよいでしょう。

移動手段

現地での移動手段としては、次のように様々なものが考えられます。以下ではそれぞれの移動手段について説明していきます。

配車サービス

留学先の地域によっては、自動車での移動が一般的で、公共交通機関があまり発達していない場合があります。また、安全面の問題として、夜間の徒歩移動や公共交通機関の利用が危険な場合も多くあります。

そうした事情から、タクシーが移動手段の一つの候補になるのですが、相場を大きく上回る料金を請求されるなど、各種のトラブルが生じる恐れもあります。

こうしたトラブルを避け、安全にタクシーを利用するためのひとつの手段として「配車サービス」があります。配車サービスで呼べるタクシーの運転手は、事前の審査を経て登録されていること、他の利用者が付けた運転手の評価が配車サービスアプリから確認できること、料金が自動計算され、支払い処理もアプリ上で完結するため料金トラブルを避けられるなど、安全への配慮がなされています。

配車サービスを使う準備としては、アプリのダウンロードとアカウント登録が必要です。実際にタクシーを使う場合は、迎えに来てほしい地点・行き先をアプリ上で指定すると、近くを走っているタクシーが割り当てられ、配車されてきます。トラブルを防ぐため、タクシーが到着したら、ナンバープレートや運転手の名前を、アプリ上の表示と見比べて確認してから乗車しましょう。目的地に着いたら、支払い手続きをして降車します。料金はアプリ上で自動計算され、事前にアプリにクレジットカード情報を登録しておけば、現金を出さずに支払いを済ませることができます。

以上が配車サービスの標準的な使い方ですが、サービスによって細かな違いがあります。国によって普及している配車サービスは異なりますので、利用する前に調べておきましょう。

公共交通機関・その他の乗り物

電車・バスに乗る際は、現金払いのほかに日本のSuica・PasmoのようなICカードを利用できる場合もあります。カードの入手方法や、料金チャージの方法を調べておきましょう。

また、乗り物を自分で運転する場合には、自動車の国際免許証の準備はもちろんのこと、現地の法律を遵守しましょう。現地の交通ルールや、交通標識の読み方なども事前に調べておくとよいでしょう。

3. 留学前の準備

パスポートやビザの準備

パスポートを持っていない人は、住んでいる地域の旅券センターで、パスポート発行手続きを行いましょう。

が必要となります。

また、既にパスポートを持っている人も、有効期限に注意しましょう。渡航先の国や滞在期間・滞在目的にもよりますが、入国の際はパスポートの残存有効期限がおおよそ3~6か月程度あることが必要とされています。

長期滞在予定の場合は、滞在予定期間より長い残存有効期間を要求されることもあります。渡航先の国の入国管理の最新情報については、渡航先の国の在日大使館などに確認するとよいでしょう。また、滞在中にパスポートの有効期限が切れる場合は、現地の日本国大使館・総領事館で更新の手続きができます。

ビザについては、先述の海外安全ホームページで、国ごとの要否や手続き方法を調べることができます。

長期滞在の場合はビザの取得がほぼ必須です。また、留学先でインターンシップに参加する予定がある場合には、留学用ではなく就労用など別種のビザが必要となることがありますので注意しましょう。現地でTAなどのアルバイトをする予定がある場合も、ビザの種類によって1週間あたりの就労可能時間の制限があるので、事前に確認しておきましょう。

ビザについてのより詳しい情報は、渡航先の国の在日大使館・総領事館に確認しましょう。

在留届・渡航届の提出

海外に滞在する場合、外務省に必ず「滞在の届け出」を出しておきましょう。留学中に、現地でテロや自然災害などが発生した際、届け出た情報をもとに、みなさんの安否確認や援護が行われます。また、届け出をすることで、現地における安全情報(事件・事故の発生情報など)を、常時、メールで受け取ることができるようになります。

海外に滞在する期間が3か月未満か、それ以上かによって、必要な手続きは異なりますので、自分の留学計画に合わせた届け出を行いましょう。

滞在期間が3か月未満の場合:「たびレジ」に登録する

たびレジ(外務省海外安全情報配信サービス)は、3か月未満の滞在の場合に使用します。

直近で渡航の予定がない場合も登録して安全情報を受け取ることができるので、具体的な留学計画が決まる前の情報収集に使うこともできます。

滞在期間が3か月以上の場合:「オンライン在留届」を提出する

海外の特定の住所(または居所)に3か月以上滞在する場合は、在留届を提出することが義務付けられています(旅券法第16条)。

在留届を提出することで、在外選挙人名簿登録申請など、領事サービスも受けられるようになります。

外務省に提出する在留届とは別に、大学にも渡航届の提出が必要です。千葉大学の場合、こちらは、各学部の窓口で手続きをしますので、所属先の学部事務室に詳細を尋ねてください。

留守宅の管理

日本でひとり暮らしをしている場合は、留学中、長期間自宅を留守にすることになります。その準備もしておきましょう。

管理人や管理会社には、長期間留守にすることを必ず伝えましょう。他にも、郵便物の配達停止・実家などへの転送手続き、ライフラインの停止手続きなどが考えられます。不在にする期間なども考慮し、必要な手続きを行いましょう。

国際郵便などで荷物を送ってもらう

日本に置いてある荷物を、家族などに頼んで送ってもらう場合は、郵便局の国際郵便サービスや、運送会社の国際サービスを利用することになります。ここでは、郵便局の国際郵便サービスを例に簡単に説明します。

国際郵便は、EMS便(国際スピード郵便)と国際小包、小型包装物に分かれます。国際小包の場合、航空便・船便・エコノミー航空(SAL)便から発送方法を選べます。

日本国内で荷物を送る場合と違い、国際郵便の利用時には次のような注意点があります。

受け付けてもらえない品物がある

モバイルバッテリー、スプレー缶などは航空機に載せられない危険物扱いのため送れません。そのほか、食品など特定の品物を輸入禁止にしている国もあります。

発送用ラベルと送る品物の一覧表を指定の様式で作成する必要がある

2024年3月からは、世界の全ての国・地域宛ての郵便物について、電子ラベルの作成が必須となりました(※従来の手書きラベルでは荷物が送れません)。電子ラベルのデータは日本郵便のWebサイトで作成できます。

送る品物の合計金額に注意が必要である

合計金額が20万円を超える場合は、税関での輸出入手続きが必要です。

郵便局に依頼する場合も、運送会社に依頼する場合も、事前にWebサイトなどで注意事項をよく読んでから依頼するようにしましょう。

転出届・転入届

海外滞在期間が1年以上になる場合は、住民票を置いている市区町村の役所へ転出届を提出します。出国予定日の14日前から手続きができます。その際、マイナンバーカード・マイナンバー通知カードの返納も同時に行いますので、忘れずに持参しましょう。

留学が終わって帰国した際には、帰国から14日以内に転入届を提出します。パスポートのほか、戸籍全部事項証明書、戸籍の附票などが必要です。自治体によって必要書類が異なる可能性もありますので、詳しくは転入先の市区町村に確認しましょう。

転出・転入の手続きは、次に説明する国民年金や国民健康保険の手続きとも連動しています。同時に手続きができるので、年金手帳や国民健康保険の保険証も一緒に持参しましょう。

年金、健康保険、税金

年金や国民健康保険の手続きは、上記の転出届・転入届と連動します。そのため、これらの届け出が必要かどうか(=留学期間が1年未満か1年以上か)によって、必要な手続きが変わってきます。

以下では、満20歳以上の学生が国民年金と国民健康保険に個人として加入している場合を中心に説明していきます。勤め先を通じて年金・健康保険制度に加入している場合や税金を納めている場合、家族の扶養に入っている場合の扱いについては、この項の最後で触れます。

留学期間が1年未満の場合

留学期間が1年未満の場合、国民年金についての手続きは特にありません。
「前納」の制度を使って、留学期間中の国民年金保険料をまとめて納付することもできます。前納の方法には、口座振替、納付書払い、クレジットカード払いがあります。

国民健康保険の加入者であれば、海外の医療機関で支払った医療費について、払い戻し請求ができる「海外療養費支給制度」を利用することができます。この制度を使う場合の申請方法については、詳しくは、自分が住民票を置いている市区町村の保険担当窓口に確認しましょう。

1年以上の長期留学の場合

1年以上の長期留学の場合は、留学期間中の国民年金への加入は強制ではありません。しかし、国民年金に任意加入し、保険料を納めることで、万が一、留学中に病気やけがによる障害を負った場合に、障害基礎年金を受け取ることができるようになります。

任意加入の手続きは、年金手帳を役所に持参すれば、上記の転出手続きと同時に行えます。海外滞在中の保険料の納付方法も決めておきましょう。日本にいる家族などに納付手続きを代行してもらう方法や、日本国内の銀行口座から引き落としてもらう方法もあります。

留学期間が1年未満の場合の項でも説明した通り、「前納」の制度を使って留学期間中の国民年金保険料をまとめて納付することもできます。一度に前納できるのは、最大で2年分の保険料です。

なお、任意加入の場合は学生納付特例制度の対象にはならないことに注意しましょう

国民健康保険に加入している場合、海外転出の手続きをすることで、脱退扱いになります。転出手続きの際に保険証を返却することになるので持参しましょう。また、帰国後に再加入する場合は、転入届の提出と一緒に手続きできます。

日本で働いている場合・家族の扶養に入っている場合

勤め先を通じて健康保険制度や年金に加入していたり、税金(所得税、住民税など)を納めていたりする場合や、家族の扶養に入っている場合は、留学中の年金・健康保険・税金などの取り扱いについて、勤め先や扶養者と必ず相談しておきましょう。

なお、家族が健康保険制度の被保険者、留学する人が被扶養者である場合は、海外に留学することを証明することによって、引き続き「健康保険の被保険者に扶養されている者」として認定を受けることができます。これによって、留学期間が1年未満の場合の項で説明した、「海外療養費支給制度」を利用できるようになります。

海外在住の被扶養者としての認定を受けるための添付書類としては、ビザ、留学先の大学の学生証、在学証明書、入学証明書等の写しといったものが必要になりますので、早めに準備し、家族に渡しておきましょう。

被扶養者における国内居住要件の追加について(日本年金機構)

参考文献・Webサイト

この記事は千葉大学附属図書館職員が原稿を執筆し、アカデミック・リンク・センターの教職員や留学制度に詳しい学内教職員の監修を受けて作成しました。また、執筆にあたっては本学留学生課の協力を得ました。

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