学会に参加する

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電球アイコンこのページでわかること

  1. 学会とは何か
  2. 所属する学会を選ぶ
  3. 参加にあたっての準備や注意点

学会とは何か

1. 団体としての学会(Academic Society)

一般的な学会の定義については、以下のように説明されています。

学者相互の連絡、研究の促進、知識・情報の交換、学術の振興を図る協議などの事業を遂行するために組織する団体(『広辞苑』第七版、項目「学会」)

ここから学会とは、ある特定の学問分野に対して、共通の研究を行う研究者が相互に交流し、その学問分野の発展のために組織される団体であることが分かります。また、学会は、政府への政策提言(ex.日本学術会議)や産官学の連携によるさまざまな共同研究のためのプラットフォーム(ex.科学技術振興機構)という社会的な役割も担うことがあります。

また、研究は自分一人だけで行うものというイメージがあるかもしれません。しかし、実際には共同研究という形をとる場合も多くあり、またそうでない場合も、研究者同士のつながりは非常に重要なものです。こうした点において、研究者の団体としての学会は大きな役割を果たしています。研究にとどまらない共同活動としては、日本学術会議において、共同声明という形で各国の学術会議との国際的な共同研究・声明を出すといった例があります。

2. 会議体としての学会(Conference)

一研究者として「学会に参加する」と言ったとき、多くはこちらを指します。

この場合、学会の役割は大きく二つ考えられます。

一つ目は、研究者が自らの研究成果を発表し、その妥当性を検討する場を提供することです。学会は大会や研究会を主催し、研究者はその場で自らの研究成果を発表することができます。また、質疑応答ではその研究の意義や妥当性を問うための議論が行われます。こうしたやり取りが、研究を前進させる原動力の一つとなっています。

二つ目は、学会誌や論文誌を発行し、研究成果を論文の形で発表する場を研究者に提供することです。研究者は、学会での議論等を経て研究内容を洗練し、論文として発表します。その発表媒体の一つとして、学会誌・論文誌というものがあります。投稿条件は学会誌・論文誌によって異なり、例えば、学会での発表が条件として課されている場合もあります。このため投稿を考える際は早めに条件を確認することをおすすめします。

学会に参加する意義

ここでは、一研究者として学会に参加することの意義について説明します。

一つ目は、当該分野の最先端の議論が分かることです。自分の研究内容に直接的な関係が無いとしても、参考にできる部分はあるでしょう。

二つ目は、自分が研究発表を行う際の参考になることです。実際に学会に参加することで、今後、自分が発表を行う時のイメージを掴むことができます。また、学問分野全体の研究状況や雰囲気を感じ取ることができます。

三つ目は、研究者同士のつながりができることです。学会に参加し、他の研究者と交流すると、新たな研究者コミュニティに参加するきっかけとなったり、必要な情報を提供してもらえたりすることがあります。
懇親会が設けられている場合は積極的に参加しましょう。ただし、有料であることがほとんどなので、金銭的に無理のない範囲を心がけましょう。学生は若干安く設定されている場合もあります。ちなみに、全く知り合いがいない状態だとつらいので、初めての場合は同じ研究室の学生同士など仲間と参加することをおすすめします。

所属する学会を選ぶ

自分がどの学会に所属するかは、専攻分野等によって、ある程度絞られます。

例えば、自然科学系・人文社会科学系問わず、各学問分野には、「日本医学会」「日本物理学会」「日本哲学会」「日本経済学会」など非常に大きな括りの学会が存在し、この分野ならこの学会への所属は必須、というように所属学会が決まることがあります。特に自然科学系の分野では、指導教員や研究室が指定した学会に所属するというケースが大半です。学会によっては、推薦者が必要な場合もありますが、指導教員の推薦で入会するというのがよくある流れです。人文科学系の分野では、特に指定されず、自分で一から探さなければならないことがありますが、その場合も関係の学会は自ずと絞られてきます。見当がつかないときは、指導教員や先輩に相談してみると良いでしょう。この他、投稿する論文誌ごとに学会への所属が必須のため、投稿条件を満たすために所属するといったケースもあります。

このように、参加する学会はおのずと決まってきますが、その他にもどんな学会があるのか、自身で調べてみてもよいでしょう。例えば学会名鑑というデータベースで、国内の主な学会を検索することができます。

なお、学会に所属しなくても研究会やシンポジウム等を聴講したりすることは可能であることが多いですが、研究発表を行う場合は学会員になることがほぼ確実に求められますので、注意しましょう。

学会(大会や研究会)に参加するにあたって

参加計画

事前に情報を収集して、参加するために必要な内容を確認しておきましょう。大会などは毎年決まった時期に行われるので、かなり前から日程が公開されていることもあります。このため大会や研究会の時期を予め確認し、研究結果を発表できるように逆算しながら研究を進める必要があります。開催日時や場所など早めに確認しておきましょう。参加申し込み期限や発表要旨の提出期限もよく確認し、期日通りに対応しましょう。前述のように、学会誌への投稿条件として学会発表が義務付けられていることもありますので、研究計画も意識しつつ、参加の準備をすることが必要です。また、学会にはただ漫然と参加するのではなく、何か一つ成果や学びを持って帰ることを目標にしましょう。

費用

遠方で開催される大会に参加する場合は交通費や宿泊費が発生します。自身の研究費がある場合はそこから捻出することができますが、無い場合、指導教員に対応方法を相談したり、学内の制度を使うことで、費用をまかなえることがあります。例えば千葉大学なら、国際会議に参加する場合、「海外渡航支援制度」を申請し、審査に通れば利用することができます。また、学科によっては同窓会組織の助成を受けることも可能です。

学会に所属するにあたっては入会費と年会費、大会に参加する際には参加費が必要となります。当然ですが、複数の学会に入会するとそれだけ多くの費用が必要となります。学生料金が設定されていることもあるとはいえ、決して安くはない金額なので、よく考えてから入会することをおすすめします。

学会当日に注意すること

細かいことですが、当日になって慌てないように、以下のような点も意識しておくと良いでしょう。

  • 服装に関して、初めての場合はビジネスカジュアルがベターです。ジーパン・Tシャツはあまりにもラフすぎるので避けたほうが良いでしょう。
  • 発表資料がいつ配られるかは学会によります。発表当日に配布される場合は、配布が発表直前であることが多いので時間に余裕を持って会場に入りましょう。まれに、資料が足りなくなったりすることがあります。
  • 会場が初めて行く場所、特に他県だと、交通経路などがわからず迷うことがあります。事前に会場までのルートを確認し、時間に余裕をもって行くことをおすすめします。
  • 会場の立地によって昼ごはんが入手困難な場合もあることに留意しましょう。学会側が近場で食事のとれるところをアナウンスしてくれることもあります。

コロナ禍での学会参加

新型コロナウイルスの流行によって、昨今の学会事情も大きく変化しています。学会参加という観点から考えられる大きな変化は、学会がオンライン開催されることで他の研究者との交流がしづらいという点です。 もちろんオンライン開催には、遠方の大学で行われる予定だった学会が自宅等で参加できるという利点もあるのですが、やはり実際に会う場合と比較すると、より具体的で密な交流ができないという困難があります。とはいえオンラインの開催であっても、懇親会が設けられている場合は積極的に参加しましょう。最近では、オンラインと現地開催のハイブリットという形で行われる場合もあり、試行錯誤は続けられています。

参考文献

この記事は千葉大学の大学院生(分野別学習相談担当:ALSA-LS)が執筆し、アカデミック・リンク・センターの教職員が監修しました。

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