何のために文献を読むのか?
このページでわかること
- 学術的な文献を読むときに意識しておくべきこと
- 「自分で書くために」文献から得られるもの
はじめに
大学で学習や研究を行うためには、特定の(未知の)テーマについて知るとき、レポートや論文を書くとき、議論やプレゼンテーションをするときなど、さまざまな場面で文献(学術的・科学的な文章)を読むことが必要になります。しかし、文献をただ漫然と読んでしまうと、何も得られなかったということになりかねません。
まずは、そもそも何のために文献を読むのかを確認しておきましょう。文献を読む「前」に、何を目的に読むのかを意識しておくことで、どこに注目しながら読むといいかが明確になり、ただ読んだだけで終わってしまったという事態を防ぐことができます。
何のために文献を読むのか
大学での学習や研究では、なんらかの文献を読むことが不可欠です。文献を読むことで得られるものはさまざまですが、大学生や大学院生、研究者などにとっては、特に以下の3点が重要です。
1. これまでの研究を知る
ある分野の特定のテーマに関して、これまでどのような研究がされてきたのか、現在どのような研究がされているのかを把握しておくことは、学習や研究において非常に重要です。そして、そのためには、その分野の論文や書籍などを読むことが不可欠です。自分の関心を深めたいときや、レポートや論文を書くときには、その分野の研究について知るために、文献を読むことになります。
これは、単に、知識を増やすためだけに行うのではありません。文献を読むことを通して得た知識は、自分自身の問いを立てることにもつながります。たとえば、何がすでに研究されているのかを知らなければ、何がまだ研究されていないことなのかに気づくことも、どのような研究であれば、これから取り組む意義があるのかを判断することもできません。
また、特定のテーマを扱ったさまざまな文献を読むと、同じ問題について、さまざまに異なる立場やアプローチがありうることや、その理由を知ることができます。これは、問題を多様な視点からとらえる見方を身につけることにもつながります。
文献を通して得た新しい知識やものの見方は、自分自身のレポートや論文で扱うテーマを決めたり、そのテーマにたいするアプローチの仕方を考えたりする助けになるはずです。
2. レポートや論文を書くときの手本にする
初めてレポートや論文を書くときには、どのように内容を展開させていけばいいのか、見当もつかないかもしれません。そうしたときに参考にできるのが、同じ分野の研究者によって書かれた論文です。
学術的な文章には、分野によって違いはあるものの、いくつかの基本的な型があります。まずはその型に沿って書くとよいのですが、型を知っているだけでは、実際にそれに沿って書くのは難しく感じられるはずです。実際に書かれたものをいくつも読んで、具体的な論文の流れを把握していくことも、自分で実際に書けるようになるためには必要だと言えます。
また、学術的な文章を読むことで、たとえば、根拠の挙げ方、節と節のつなぎ方、反論への応じ方など、さまざまな表現を学ぶこともできます。書きたいことはあるのに、実際に書こうとすると手が止まってしまう、という人は、こうした表現を身につける必要があるのかもしれません。
手本となる文献を探すには、まずは教員や先輩に聞いてみるのがよいでしょう。一口に文献と言っても、文献のなかには、新聞記事や教科書、一般書や専門書のほかに、原著論文やレビュー論文(サーベイ論文)、大学の学位論文など、さまざまなものがあります。自分が学びたいのが、どのようなタイプのレポートや論文の書き方であるのかを先生や先輩に伝えて、手本になるような文献がないか相談してみてください。
3. 自分の研究に用いる
文献に書かれている事柄は、自分のレポートや論文を書く際に、自身の主張の根拠として用いたり、自分とは異なる立場の検討のために用いたりすることができます。
レポートや論文において、根拠を挙げたり、他の見解を検討したりすることは不可欠であるため、文献を読む際には、自分の主張との関係などについても考えておくとよいでしょう。
自分のレポートや論文で他の文献を用いる際は、適切な形で「引用」を行う必要があります。引用のルールについては、文献を引用するで説明しています。
文献を読んでいるときには
ここで見たように、文献を読みながら、自分のレポートや論文で扱うテーマについて考えたり、自分の言いたいことと関連付けたりといったことを行う機会は多いはずです。
そうしたときに気をつけたいのが、こまめにメモを取ったり、付箋を貼ったりなどして、文献を読んでいるときに自分が考えたことや気になったことを忘れないように工夫をすることです。どんなにはっきり考えていたことでも、文献を読み進め、そこに書かれている論理を追っていくうちに、忘れてしまうというのはよくあることです。
些細なことでも、すぐにメモを取れるように、付箋などを常に用意しておくといいでしょう。そのときは、文献の「どの部分」にたいして自分が考えたことであるのか、その部分(参照箇所)を正確にメモするのを忘れないようにしてください。