千葉大学学術リソースコレクション c-arc

蕣標本

蕣標本[壱]

蕣標本[貳]

蕣標本[全]

このコレクションについて

千葉大学附属図書館松戸分館で所蔵する貴重資料である(あさがお)標本』 の画像です。

松戸分館では朝顔のさく葉標本は本資料と『朝顔標本』の二種を所蔵しています。いずれも表紙裏に「提供者 浅山英一助教授 千大園図受付」とあることから、千葉大学園芸学部で教鞭をとる一方、NHK趣味の園芸への出演や書籍の執筆など多方面で活躍した故浅山英一(1913-2000)からの寄贈と考えられます。

『蕣標本』は 顔彩手稿の「全」、花と茎葉のさく葉標本の「貳・弐」の三冊から構成されています。「全」には甲辰八月や明治三十七年八月の日付が書き込まれていることから1904年夏の記録と推測されます。各巻とも裏表紙裏に「吉岡七郎兵衛」の墨書があります。

電子化の前に綴じを解体した上で資料全体をクリーニングしました。また、台紙から剥がれ(かけてい)た標本を再貼付し、できるだけもとの状態に戻す作業を行いました 。現物資料は一葉一葉をポリエステルフィルムエンキャプシュレーションフォルダに挟み、さらに中性紙保存容器に収納して保存しています。

このコレクションの補修および電子化は、公益財団法人田嶋記念大学図書館振興財団から助成を受けておこないました。

  1. UV Mirador 蕣標本[全]
  2. UV Mirador 蕣標本[壱]
  3. UV Mirador 蕣標本[貳]

蕣標本の公開に寄せて

賀来宏和千葉大学大学院園芸学研究科客員教授

千葉大学学術リソースコレクションは大学が所有する貴重書等をデジタル化したもので、園芸学部が所有するものとしては、日本の園芸文化史を研究していた岩佐亮二千葉大学名誉教授の収集資料を核とするもの(江戸・明治期園芸書コレクション)があるが、この度、新たに故浅山英一助教授が寄贈された資料の中から、同じく日本の園芸文化史を物語る上で貴重な(さく)葉標本帖の一部が公開された。

わが国の園芸文化は、森羅万象に神性や霊性を見る感覚から、やがて列島にもたらされた文化、文物の影響を受けて、植物の観賞という習俗や作法を生じたことに始まる。大陸との交流が盛んな時期は新たな植物や観賞様式が伝わり、また、途絶の時期にはそれらを土台として国風と称される文化が勃興するのは、園芸の分野においても同様である。

そのような園芸が、世界の園芸文化史上も独特の発展を遂げ、当時の世界において最高水準の域に達するのは、260年余に亘り、海外との交流が極めて限られ、比較的太平の時代が続いた江戸期である。

江戸期の園芸文化は、時代に応じて、多様な品目の植物の流行現象を生じる。その特徴は、自然の変異や実生の中から僅かな違いを見抜き品種化、弱々しく嫋やかな品種を良しとする価値観や美意識、葉の美しさへのこだわり、品目に応じた栽培様式と観賞作法の存在、園芸の広範な大衆化、多様な園芸書、図譜、番付などの発刊、梅屋敷、菊合せ、菊細工など園芸を題材とした娯楽興行などにまとめられる。すでに、リソースコレクションとしてデジタル化された貴重書はこの一部を物語る。

その特徴を表す代表的な品目として、「朝顔」があげられる。「朝顔」は平安期にその種子が薬種として渡来したものであるが、安土桃山期もしくは江戸期初頭までは、花はその野生種の「青」一色であった。その後、突然変異により「白」の花色が出現。その後は文化文政年間から幕末にかけて、花色は勿論、花形、葉形、葉に入る斑など多様なものが生じ、「変化朝顔」と称される一群の品種群を生み出す。

江戸期の園芸は、原則として人為による交配はなされておらず、こうした「朝顔」も実生の中から変異個体(変異品種)が生まれるもので、複雑な遺伝子の組み合わせにより、結実した種子を播種してもすべて同様な品種が生じるとは限らず、また、変異個体によっては種子を結ばない品種もあった。つまり、「変化朝顔」を楽しむためには毎年大量の播種作業を行い、その中から系統的な選抜を繰り返す必要があり、まさに、膨大な時間と労力をかけて実現する江戸期の園芸文化を象徴するような植物の一つが「朝顔」であった。

こうした江戸期の園芸文化の一部は、明治維新後にも一層の発展を遂げたものがあり、「朝顔」はその一品目である。この度、デジタル化されたものは、江戸期の園芸文化の流れを受けて、明治期に好事家の間で収集、培養された「変化朝顔」の腊葉標本帖の一部である。

一連の腊葉標本帖には、明治期に生じて朝顔の収集家の中で一時期もてはやされた「手長」と称する一群の品種に関して、花色の残る状態となっており、この標本帖自体の保存措置を図るとともに、続いてデジタル化が望まれるところである。

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